第27話
「えーっと、なんのことかな?」
「しらばっくれてもわかっているんぞ。お前が3冊のノートを持っていることは」
三好が生き返ってから会うのは今日が初めてなのに、何でそのことを知っているんだ。監視でもされているのか俺は。監視されているにしても、部屋の中までは覗けないから俺がノートを持ってきていることを三好が知る術はない。学校でだって、誰かに見られたら困るから鞄から出していない。今日は体育はないし、移動授業も1個だけだ。それもこれから。俺の鞄の中身を見る機会なんて三好にはない。でも、三好の言っていることが、鎌をかかて言っているとは思えない。目が本気の目をしている。それみに、3という数字は咄嗟に思いつきそうだけど、本当にノートは3つだから、何かしらの根拠はありそうだ。
「俺がノートを3つ持っていたら何?」
「何って。私が訊きたいことは、六花のことだけ。六花を殺したのは君でしょ」
「さっきも言ったけど、俺じゃないし。そもそも死んでいること自体、初めて聞いたし……」
待てよ。仮にもし、三好妹が死んだのならば、何で俺の元に連絡が来ない。俺は三好妹と2回目に接触する時に、店主と連絡先を交換して、週2で連絡を取り合っている仲だ。三好妹が本当に殺されているのなら、何かしらの連絡があって当然だと思う。連絡が来ないのは店主が何か知っているってことだ。まさか、店主が犯人なのか? それはないか。
「三好。妹はいつからいないの?」
「何でそんなこと」
「いいから。犯人がわかった気がするかから」
「誰!」
順序を飛ばすでない。一旦落ち着け。
「まずは、いつからいないのか教えてくれない」
三好はため息を吐きながら話す。
「六花の姿を最後に見たのは土曜日の18時。それ以降家に帰ってきていない」
「三好、一旦落ち着いてさ、詳しく話を聞かせてくれない」
スマホを使って時間を確認し、まだ10分の時間があるから、俺はさっきまで昼飯を食べていた椅子に座る。
三好はナイフを持ったまま隣の席に座る。
そのナイフ、机の置いてくれないだろうか。もちろん奪ったりはしないから。
「犯人がわかったかもって?」
「まだ正確ではないけど、心当たりのある人物が1人だけいるんだよ」
「それは誰?」
だから、そう結論を急ぐなよ。俺だってまだ頭の中で情報を整理中なんだよ。
「妹とは連絡取れている?」
誰なのかをよほど知りたいのか、俺はめちゃくちゃ睨まれていた。
「これも重要なことだから」
「取れていない。家族の誰も」
「おじさんにも訊いた?」
「訊いていないけど何?」
「……そうか。それじゃあ、情報を時系列に並べ替えよう」
俺は山内さんのノートを取り出して、適当なページを破った。
「まず。俺が三好を生き返らせるために店主と共に、三好の妹を説得したのが、17日土曜日16時ごろ。それから、三好が妹を見なくなったのは、その日の18時。この間は確実に生きていたんだよね」
「うん。出かける姿を見かけたから。神山君が呼び出して殺したんでしょ」
俺への疑い全く晴れる気がしないな。とりあえず今まで通り時間稼ぎでもするか。
「だから違うって。あ、何なら山内さんのノートも見てよ。1枚ずつ捲ってあげるから」
三好は山内さんのノートに触れないから、俺が1枚ずつ捲って、ノートには何も書かれていないことを証明した。
「何枚か破った跡があるけど、その紙はどこに?」
「切ったものは使えないって証明したのは三好じゃないか。そんなもの、さっき切った1枚しか持ってないよ」
山内さんが破ったものは俺は知らない。そもそも、山内さんがどう使っていたのかも知らないから。
三好は相変わらずナイフを俺に向けて、怖い顔をする。
そんな顔をするのなら、殺される前に仲直りをしておけよ。
「どう考えても神山君しか犯人がいないんだよ。もし仮に、神山君以外が六花を殺したのだったら、六花のノートを破る必要がないから」
確かに! って、感心している場合じゃない。でも、確信は持てないから、店主を犯人の扱いにするのは違うと思う。今の三好だったら、何をしでかすかわからないから。安易に犯人の名は言えないな。
「待って。わかったから。俺の予想では、『Shaun』の店主が何かを知っているよ。訊いて教えてくれるかわからないけど。三好の妹が見つかるまで共闘をしようよ」
店主ごめんなさい。三好にナイフ向けられるのやっぱい怖い。
10分の時が過ぎるのは早い。もう予鈴が鳴ってしまっている。
「三好。ここまでだ。あとの話はお店ででもいいか。もし、三好が長話をしたいというのなら、俺は部活を休むから」
「なら、『Shaun』で待っている。学校が終わったらすぐに来て」
俺は頷いて、急ぎ足で地学室を出る。誰もいないトイレに一目散に駆け込んで用をすまして、教室に戻る頃には本鈴が鳴り出していた。
鳴り終わる前に何とか教室には着いたから、遅刻はしなかったけど、先生からは白い目で見られていた。
犯人は三好なんです。
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