第21話

 家に帰った俺は、夕食よりも前に部屋に篭り、三好の2枚目のノートを机に広げていた。

 三好を殺した犯人を学校の人間だと思っていたけど、先生と後輩を除いては全員が三好にノートを奪われてノートを使用することができず。学校にもまだ持っている人がいるかもしれないけど、とりあえずは先生と後輩に注意しながら、三好を殺した犯人を探していこう。

 そういえば、三好は白水高校以外の人間も何人か調べていたな。その可能性もあるかもしれないから、見てみようか。


 

 水野幹久みずのみきひさ。50代、会社員。金沢かなざわ地区在住。

 ノートを使って自殺する。ノートは回収済。

 

 古屋伊織ふるやいおり。30代、会社員。金沢地区在住。

 私を殺そうとして、会長に殺される。ノートは、未回収。

 

 桜井大介さくらいだいすけ。20代、大学生。北州きたしゅう地区在住。

 すでに死亡済み。ノートは未回収。

 

 片瀬香利かたせかおり。40代、主婦。南州みなみしゅう地区在住。

 私を殺そうとして、会長に殺される。ノートは回収済。

 

 井上梨々いのうえりり。17歳、高校生。南州地区在住。

 

 楠木華蓮くすのきかれん。16歳、高校生。南州地区在住。

 すでに死亡済み。同じ高校の高田が怪しい。ノートは未回収。

 

 高田裕也たかたゆうや。15歳、高校生。南州地区在住。

 

 星野和人ほしのかずと。20代、コンビニ店員。金沢地区在住。

 すでに死亡済み。会長の話によると、ルール6に反したらしい。

 

 原田源三はらだげんぞう。80代。金沢地区在住。

 9月8日。市内の病院で死亡が確認。ノートは回収済み。

 

 岡部潤おかべじゅん。20代、大学生。北州地区在住。

 会長に殺される。ノートは未回収。

 

 池田正人いけだまさと。16歳、高校生。北州地区在住。

 会長に殺される。ノートは未回収。

 

 三好が調べ上げているのはここまでか。死人が多いな。三好が生きている時点でこれだけ死んでいると言うことは、この中で生きている人物が犯人の可能性があると言うこと。

 1人すごく厄介な人がいるけど、合わせて2人しかいないのか。どちらも情報が少ないな。高校生としか書かれていない。俺に見つけることは不可能だろうな。

 ペラペラとノートを捲っていると、破られた紙が1枚挟まっていた。

 

 

『神山君がここを読んでいるということは、私はもう殺されたあとだと思う。(これ一度書いてみたかった。)そんな神山君に、私の家族のことについて書き記す。

 私の両親は、仮面夫婦のように仲が良くない。いつ離婚してもおかしくはないと思う。こんなことを神山君に話しても仕方ないと思うけど、私が殺された原因の1つになるから、全部正直に話す。

 そんな両親を見てきたから、兄弟姉妹の仲も良くないの。神山君も知っての通り、私って優秀でテストで常に学年1位だから、それが原因で妹と弟からも敬遠されていることはわかっている。妹も弟も母さんから姉もできているんだから。そんな目で見られている。かわいそうだと思うけど、2人を守るためには私が頑張らないといけないから。私は辞めるつもりはない。死んでしまっては元も子もないけど。笑

 そんなことより、私の妹がそろそろ限界を迎えていると思う。高2になってから、家で妹と会うことさえなくなった。何をしでかすかわからない。私に何かあったら妹の可能性があるとだけ言っておく。妹もノートの所有者だったから。疑いたくないけど、私が殺されたのなら妹を疑って。あとは任せた、神山君』

 

 

 頭いいんだから、もっと簡潔にまとめられなかったか。最後にごっついことぶっ込んで。私が殺されたのなら妹が犯人の可能性が高いって。あとは任せたって。三好妹との仲最悪なのに、俺にできることなんて何もないぞ。

 そもそも妹が犯人なんて有り得るのか。いくら家族仲が悪いと言っても妹が姉を殺すのか。

 山内さんと会いに行った時の妹の反応……確か、まだ行方不明になっている段階だったのに、とても焦った表情を見せていた。姉には触れられたくない様子だった。単に姉妹仲が悪いだけだと思っていたけど、あれがもし、姉を殺したことへの恐怖だったのなら、辻褄があう。最後の勢いよくカーテンを閉められたのだって、俺と山内さんを恐れていたから。姉を殺したことがバレてないかって。

 それに、ニュースによると、三好は犬と一緒に殺されていたらしい。ここで1つ疑問だ。うちの学校に三好が犬を飼っていることを知っているのは何人いるだろうか。近所に住んでいる人間なら知っているかもしれにけど、友人もいない三好が犬を飼っていることを知っている人は学校にはいないだろう。もし、ノートに三好が死ぬように書いたのなら、犬自体には何の影響もないだろう。たとえ散歩の最中でも、車に轢かれるみたいに可能性のあることを書かなければ、犬は死なない。なのに何で三好の飼い犬は死んだのだ。三好を殺したくても犬を殺す必要はないし、三好が憎くて苦しめたいのだったら、時間差で殺さないと意味がない。同時に殺されて死ぬまでは悲しむかもしれないけど、もっと事前に殺した方が、三好の悲しみは大きいだろう。それでストレスを晴らせばいい。殺したのは自分だけど可哀想に。と思えばいい。どうしてそうしなかったのか。それは妹だから。

 三好が散歩中だったってのも違和感といえばそうなる。三好1人を殺すのだったら、いつ何時でもいい。散歩中の時間ということは、朝か人の多い夕方か。どちらにしても、夜より見つかりやすい時間だ。焼き殺されていたから、朝日や夕日の時間を狙ったの可能性もあるけど、わざわざそんなことをしなくても、海辺ノートに書いた犯人は捕まることはない。ノート製作委員会の会長が言っていたのだから。ノートにはストレートに書けばいい。回りくどいことをしているのは、自分を犯人だと思わせないため。もし、焼死と死因を特定のものにするのなら、家そのものが燃えるかもしれないから、三好を殺すにはもってこいだ。それなら事故死として処理できなくもないから。それなのに河川敷で焼死。家を焼きたくはなかった。それと、これは俺自身が経験して思ったことだが、目の前で人が死ぬのを見てられない。俺が三好の妹の立場でも、できるだけ家から遠い場所で死んでもらいたいものだ。妹なら姉が出かけたタイミングは知っているだろうし、いつもどの時間に帰ってきているのかも知っている。三好のことだから散歩コースを変えられた時点で気づいたのではないか。

 考えれば考えるほど、妹が犯人に思えてくる。それもこれも三好が変な遺書なんか遺すからだ。余計な仕事増やしやがって。俺に妹をどうしろと。山内さんもいない今、妹と接触するのは至難の業だぞ。

 1つ三好妹と話をする方法があるとするならば、『Shaun』の店主を頼ることだけだ。話を通すことはできるだろう。あとは、三好の妹が来るかどうか。俺にできることはそれしかない。

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