第14話
家に帰った俺は、改めて三好から預かっているノートと対峙していた。
このノート。いつも鞄に入れているけど、正直少し邪魔なんだよな。かと言って、三好から預かっている大事なノートだから、雑には扱えないし。どうしようか。勉強机の引き出しはサッカー関連のもので一杯だし、机の上には教科書とかが積み上がっているから、重ねたら失くしそうだし。どこに置こうか。学校に置くのもありだけど、そっちも失くすリスクがあるから、簡単には置けない。
引き出し1つでいいから片付けるか。
部屋の片付けって、やろうとした時に捗らないのはなんでだろうか。勉強もそうだけど、初めはやる気みたいなのがあっても、いざ目の前にした途端やる気がどっかに消えてしまうんだ。きっと何とかホルモンが、脳のどこかに何とか作用してやる気が失せるんだ。
そんなことを考えているうちに引き出しの片付けを終えることができたかもしれないけど、なんせやる気が起きないから仕方ない。とりあえず中身を机の上に積んでおこう。
……いや中身は全部捨てよう。
何でこんないらないものばかり入っているんだ。まともにいるものがなぜか入っていた1円くらいだ。99パーセントがごみ。後の引き出しも同じような感じだろうな。でも、やる気が起きないから、しばらくは放置だ。
引き出しにノートを片付けようとしたが、ノートのことが気になりすぎて、俺は机の上で2枚目のノートを開いた。
相変わらずすごいな。文字の数というか。検証を何度も繰り返していて。
Q、ノートをゴミ箱に捨てるとどうなるのか?
A、郵便で届く。
Q、ノートを燃やすとどうなるのか?
A、ノートは紙なのに燃えない。
Q、油をつけて燃やすとどうなるのか?
A、ノートは燃えない。油も染み込んでいない。
Q、ノートを粉々に切り刻んだらどうなるのか?
A、次の日に郵送で新しいものが届く。
Q、改変したページを破るとどうなるのか?
A、書いていた事が消えてなくなる。
Q、改変したページの前日分を破るとどうなるのか?
A、過去に戻ることはなく、事柄自体がなくなる。
Q、同じ日付、同じページに対極なことを書いたらどうなるのか?
A、前方に書いたことだけが適用される。
Q、他人の改変に干渉できるのか?
A、他人が改変したことを変えることはできない。書いても書いていないことになっていた。
Q、ノートを他人に譲渡することはできるのか?
A、できない。
Q、ノートの所有権を譲渡することはできるのか?
A、できない。
Q、ノートの次の所有者を決めることはできるのか?
A、指名することはできるが、指名された者は前所有者が死亡するまでは所有できない。
Q、他人にノートの中身を見せることはできるのか?
A、ノートの所有者以外はノートの中身を見ることはできない。次の所有者に指名されているものだけは、所有者が見せる条件のもと見る事ができる。
Q、ノートに書く順番は決まっているのか?
A、3ページ目に書いた次に5ページ目に書くと、4ページ目は何を書いても適用されない。
Q、ノートは全部で何冊あるのか?
A、製作者の話によると50冊。
Q、ノートの製作者と会うことはできるのか?
A、できるが、製作者の気分次第。
Q、他のノート所有者はノートを触る事ができるのか?
A、電気が走る。(強め)
よくここまで調べ上げることができたな。並の熱量じゃここまではできないぞ。それに、他人のノートに触ると、電気が走るんだ。しかも強め。電気怖いから、触らないように気を付けないと……。
そういえば。山内さん……三好の家に一緒に行った時に、三好の妹が投げつけたノートに触れて、痛がっていた。あの時、僕ははっきりと見たんだ。山内さんは、ノートの側面には触れていなかったことを。
山内さんがそんな下手な嘘をつかないだろうと思って鵜呑みにしていたけど、まさかそう言うことなのか。だとしたら、三好の妹も、ノートの所有者ということになってしまわないか。そんな、こんな身近にノートの所有者がいるなんて事があるのか。確か、三好は、ノートの所有者を調べて、うちの学校に8人いるとか言っていたな。
パラパラと三好のノートを捲ると、最後から3枚目のページにノートの所有者が書かれていた。
本当によくここまで調べ上げる事ができたな。だけど、今はそんな三好に感心している場合じゃない。山内さんはノートの所有者。これが確定した。そして、僕が三好のノートを持っていることを知っている。山内さんが三好のように何度も検証を繰り返しているかはわからないけど、俺をノートの所有者だって思っていても不思議じゃない。現に僕は山内さんにノートを見せてしまったから。
山内さんは三好がノートの所有者だって知ってしまったから三好を殺した。それ以外にも、ノートの所有者はいるんだから、山内さんに限定するのは違うかもしれないけど、三好と山内さんは同じクラスなんだ。三好がここまで調べ上げたのだから、山内さんも三好が所有者だってことを事前に知っていたのかもしれない。山内さんが人殺しなんてするわけないって信じたいけど、俺の行動を監視するために、ノートを返すのについてきたりしていた可能性もあるもんな。一体俺は、何を信じたらいいんだ。うちの学校にノートの所有者多過ぎだろ。
とりあえず山内さんには、それとなくメッセージを送って確認を取るのがいいけど、俺の文章力で大丈夫だろうか。下手な文章を送れば逆撫で……と決まったわけではないけど、機嫌を悪くされたら、ブロックされるかもしれない。
ブロックされたりしたら、山内さんと連絡取れなくなる。それだけは嫌だ。
『ノートのことで話がしたい。開いている日ない?』
悩みに悩んで、時間をかけたメッセージだったが、この後山内さんからの連絡は来ないのだった。合わせて既読無視をされて、俺の心はズタボロになっていた。
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