第6話『ママの言葉』
ママの体は神経難病の一種ではないかと診断されていたけど、お医者さんにもハッキリとした原因や対処法は分からなかったの。
私が物心つく前から病気は進行していて、思い出に残っているのは、いつもベッドの上から優しく微笑んでくれているママだったの。
パパも世界中の名医に依頼して、ママの病気を治せないか、せめて緩和する手段がないかを必死に探していたけど、それはできなかった。どんなお医者さんを呼び寄せても、みんな
ママは私を産めたことを奇跡だって言っていたわ。まさか自分が、こんなに元気な子供を産めるなんて、神様がくれた奇跡としか思えないって。事実、私は非の打ち所が無いほどの超健康優良児で、超天才の超美少女だし。
私はママに喜んでもらおうと思って、色んな勉強を頑張ったの。3才でハイスクールレベル、4才でカレッジの勉強まで終えたの。私が頑張るとママが喜んでくれるのが嬉しかったから、私もとにかく一生懸命勉強したわ。ちゃんと私は成長しているよって、ママに見てもらいたかったから。
ママは占いが得意だったの。タロットカードや占星術、色んな占いの知識を持っていて、それが本当に当たるのがとても不思議で、私もママから占いやスピリチュアルなことについて色々教えてもらっていたわ。
ママは体がキツいはずなのに、本当は無理をしていたと思う。でも、私が新しいことを覚えるのが嬉しかったみたいだし、きっと私にも占いを覚えて欲しかったんじゃないかと思うの。
でも私が5才になってすぐ、ママの容態が急激に悪化したわ。お医者さんにはどうすることもできないし、パパもあの時既に覚悟を決めていたと思う。
できるだけ家族で一緒に過ごす時間を作って、色んな話をして、何でもいいから一つでも多く思い出を残したかったのだと思う……。
ママは日に日に衰弱していったけど、精一杯頑張って、笑顔を見せてくれていたの。そして、これが最後だからと言って、私の未来を占ってくれたのよ……。
「華蓮……、あなたはとても良い子で、ママはとっても幸せよ……。華蓮がママとお別れして十日後、あなたにとって運命の出会いが訪れるでしょう……。華蓮ならきっと、その人と最高に幸せな人生を送ることができるはずよ……。華蓮のウエディングドレス姿を見られないのは残念だけど、いつも天国から見守っているからね……」
それが、ママの最期の言葉だったの……。私もパパも、既に息を引き取ったママの手を握って泣いていた……。泣くしかできなかったから……。
私はママの葬儀で、また泣いちゃった。パパも涙を流していたし、親戚の人が大勢集まって、みんな慰めの言葉をかけてくれたの。
私が知っているママはほとんど寝たきりだったから、親戚との交流はそれほど無かったはずだけど、本当に大勢の人が弔問に来てくれたわ。
葬儀の後、パパはとても忙しそうにしていたの。ママと一緒に居る為に、お仕事とか色々無理をしていたんだと思う。スケジュール調整でかなり苦労していたみたい。溜め込んだ仕事を片付ける為、急激に忙しくなっていたみたいね。
私はもちろん、ママとお別れしたことが悲しかったしツラかったけど、最後にママが占ってくれたことを気にしていたの。『ママとお別れして十日後に運命の出会いがある』、それをいつも気にしていたわ。
そしてあの日、私は当てもなく屋敷を飛び出した。ママの占いを信じてね。初めて歩く道を、直感に従って歩き続けて……、そして優司に出会った。
初めて会って、直ぐにこれが運命の出会いだと確信したわ。見ず知らずの私が困っているところへ、優司は迷わず手を差し伸べてくれたわね。その優しさが、私のお婿さんになる最初の条件。
あの後すぐ桑原に頼んで、優司のことを調べさせたの。徹底的に個人情報を集めさせて確認したわ。優司の家柄は関係無い。優司が独身恋人無しであれば問題無い。その辺は何も問題無かったから安心したわね。
優司の生年月日も血液型も私との相性は最高だし、どんな占いをやっても私と優司の相性はパーフェクト。これはママの占い通り、運命の出会いだったのよ。そうじゃなくちゃ、私は優司をお婿さんに選ばなかった。この選択は間違い無いと思う。ママの言葉を信じているからね……。
ママが言った『運命の出会い』、それが現実になったことを報せると、パパも凄く喜んでくれたわ。ママが言った通り、私は最高に幸せな人生を送ることができるんだって。とにかく、ママの占いは絶対に当たるから。あとは私がアプローチをするだけ。そしてあの日、優司の家へ行って、正式に婚約の話をしたって訳よ。
これで分かったかしら。私と優司は相性パーフェクト、ママの占い通り運命の出会いなのよ。私達は結ばれるべくして出会ったのだから。疑う余地は全く無いし、もう今更後戻りはできないわよ。この私、豪天寺華蓮のお婿さんとして覚悟を決めてちょうだい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます