第6話魔石を壊します
辰馬は警察に電話し慣れたように状況を説明し、その後男の身体を触りながら魔石のある場所を探していた。
「何をしているの?」
付いてきた長谷川が辰馬に聞いた。
「この男の魔石を破壊するんです。ダンジョン外での人への魔法使用は重罪ですからね。警察官に渡す前に逃げられても困りますし毎回壊しているんですよ」
「そう。魔石破壊するところビデオ撮影してもいい?もちろん顔は隠すから!」
「え…まぁいいですけど。お、あったあった」
辰馬は男の左腿にある魔石を発見した。
「ダンジョン研究者でも何故体表に魔石がある原因は分かっていないの。モンスター達は体内にあるのにね…」
辰馬は過去に戦った探索者達のことを振り返り、あることを思い出した。
「なるほど、私は第三階層適応者を数回倒すことが出来ましたが、みな魔石は体内に浸食しつつありましたよ」
「えぇそうね。そして第四階層適応者にもなると完全に魔石が体内にあると言われているわ」
長谷川の話を聞き、辰馬は疑問に思った。
「では、第五層適応者になると、どうなるんでしょうかね?」
長谷川は神妙な面持ちになり話す。
「まだ…はっきりと分からないわ。そもそも第五階層は未だに、この二十年でも進めてないもの」
第五層はドラゴンが生息していると言われており、現代兵器も通用するが数が多いため
進むのが現状厳しいと言われていた。
「ん~案外モンスターになったりするかもしれませんね」
辰馬は冗談交じりに話した。
「ふふ、そうね。階層進むごとに凶暴な性格になる人も増えてくるものね」
「そうですね…準備はいいですかね?壊しますよ」
辰馬は話を切上げて、男の魔石を壊す事に作業に戻った。
「えぇ、いつでも問題ないわ」
「では、行きます」
辰馬は男の左ズボンを捲った。
現れた魔石は、明らかに体内に浸食しているようだった。
(経験上から言っても間違いなく第二階層適応者で第三層にも足を運んでいるな)
辰馬が魔石を指で挟み力を入れた瞬間に男が目を開けた。
意識を失っていたはずなのに、男は起き上がり叫んだ。
「あ…ああああああああ!」
「ごめんね、すぐ終わるから!」
辰馬は更に力を込めて魔石を破壊した。
「あ……」
魔石を破壊した瞬間に男はプツンと糸が切れたように意識を失った。
辰馬の手にあった魔石は七色の光を数秒間放ち塵となった。
「映像では見たことがあるけど、実物は初めてみたわ」
「まぁそうだと思います。普通は魔石を壊す人が派遣されて壊すと聞いてますから」
「そうよ。全国各地にある初級ダンジョンでのトラブルで捕まった探索者は特別な施設へ連行してから破壊するもの」
「痛そうで少し可哀そうですが、これが安全なんですよ。過去に取り逃がしそうになったことが何度もあったんですよ」
辰馬は過去に逃がしてしまい二次災害を生んだ探索者達を思い出していた。
長谷川は魔石を壊した映像データを確認していた。
「そうね…確かにこれが確実なのかもね。映像データも問題無かったわ、何か研究に役立つかもしれないわ。ありがとう!」
「いえ、これくらいなら大丈夫ですよ。それに茉莉さんにはテスト前に勉強教えて頂いてますから力に慣れて何よりです」
「本当に出来た子ね…それと貴方の常軌を逸した身体能力の方が興味があるんだけど、教えてくれるかしら?」
辰馬に助けられた人は皆尋ねてくることだが、辰馬にも原因は分かっていなかった。
「よく聞かれるんですが全く分かってないんです。健康診断みたいなのしても、異常はないですし…まぁ食欲が強いくらいがデメリットですけど」
「なるほどねぇ…少し触るわね」
辰馬の了承を得ずに、長谷川は年上の色気を出しながら辰馬の身体をベタベタ触れた。
「凄くいい筋肉してるわね、ゴツゴツしてるし…」
辰馬は言いずらそうにしながらも長谷川に話す。
「あの…私のここの用心棒の時間はあと数時間あるので、離れてください」
そう言い終えると辰馬は長谷川を引き離した。
「あら…私も未だイケると思ったんだけどね…まぁいいわ。今夜は危ないところを助けてくれて、本当にありがとう」
「いえ、これも仕事ですから。では、私はこれで!」
辰馬はそう言い終えるとダンジョン近くまで、走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます