第1話教室での出来事
辰馬は教室に着くと昨年度と同じクラスであった石崎壱黄がいた。
彼らは同じ中学で悪友と呼べる間柄であった。
石崎は体格が良く、少々短期でもあり一昔のヤンキーと言った雰囲気であるが実際に中学の途中まで校内の問題児とされていた。
「よう、辰馬相変わらず朝のトレーニングしてるのか?」
「おはよう。まぁ普段通りだな。それより進級出来て良かったな、一応ここ進学校だからさ」
「マジそれな、辰馬が勉強教えてくれなかったら留年確定だったわ」
「俺だけじゃなくて委員長さんにも感謝だね」
石崎が嬉しそうな顔になる。石崎と委員長である長谷川茉莉は同じ中学出身であり不良と生真面目な性格ということで反発する事も多かったのだが、辰馬との喧嘩に負けてから心機一転した過去を持つ。
「そうだな。彼女どこのクラスなんだ?」
「どうやら、このクラスみたいなんだよ!」
(だから朝から石崎がソワソワしていたのか…頑張れよ)
辰馬は教室を見渡すと少し離れた席に長谷川はいた。黒髪をサイドテールにしており、久々に見たが理知的な印象を与える。眼鏡美人ということで入学してから人気な人物だ。
「お、確かにいるな。今年こそ頑張れよ」
辰馬は石崎の肩を叩き励まし、教室後ろから黒板に書かれている座席を確認し座る。
「おう、てか変わらず視力いいよなぁ。A4サイズで書かれてるのに、よく見えるよな」
「まぁねぇ、視力は自信あるんだよ。というか俺の前の席がお前か…今年度も石崎係やれってことかな」
「そうだな。教師連中も俺を制御できる奴がいないと不安なんだろ」
「自分で言いますか…高校入学前ならそうかもだが、今ならその辺にいる見た目ヤンキーってだけだろうに」
辰馬は少し呆れた表情で首を振る。そして一年間一緒のクラスの人物を改めて確認していると気づく。同じ中学である山内成がいることに。中学二年の時に石崎が虐めてたのが山内であり、辰馬が仲裁し喧嘩になった経緯がある。
「あれ同じ中学にいた山内もいるんだな」
「山内?誰だっけそれ?それより、未だ用心棒やってるのかよ?」
山内は石崎の方へ殺意を込めて睨んでいるが、石崎は気づいてる様子もない。
(虐められた人間は忘れないってやつか…。石崎も大分性格変わったから以前とは違うけど、人の心はそう単純じゃないから仕方ないよな)
「あ~気にするな。用心棒はやってるさ、俺の稼ぎ場所だからな」
多くの相手が探索者のため魔法やら身体強化の攻撃が来るから非常に危険だ。
「俺もやりてぇよ~。ラーメンのバイト辛くってよ」
石崎は入学してから直ぐラーメンのバイトを始めて毎度愚痴を言いながらもバイト中は楽しそうにしていた。
「ダメだなぁ、そもそも喧嘩苦手なお前がな…」
辰馬がそう言うと石崎はニヤッと笑い制服を少し脱ぎ右胸辺りを見せてくる。
石崎の右胸には黄色の魔石が埋め込まれており、ダンジョンに入った証拠でもあった。
「どうだ?俺もこれで探索者の一員だぜ、魔力だって少しは使えるようになったんだ」
石崎は自慢げに少し大きめの声で話す。
ダンジョンで魔力を貰う非日常なことのため、クラスの多くから関心を寄せられる。
『え、石崎君ダンジョン入ったの?』
『入場料って確かかなり取られるって聞いたけど…』
『能力はなんだ?』
クラス全員の目が石崎に向く。
石崎もこんなに反応されると思っていなかったのか、目をキョロキョロさせて挙動不審になっている。
「石崎、能力は何だったんだ?」
改めてクラスの代表として辰馬が石崎に質問する。
ダンジョンで魔力を貰った瞬間に自身の固有能力が何かがハッキリと分かると言われている。
「えっと…微弱な電気を操る能力です…」
『大した事なさそー』
『そうだな、操作系とか強い能力を期待したのによ』
『調べたけど探索者で有効活用出来た例ないなぁ』
『なら金の無駄だったてことか』
石崎も自覚があったのだろう。普段言い返すところで言い返さなかった。
多くの人間が持つ固有能力の多くが探索者として無意味と言われている。
石崎が落ち込んでいるのか肩を落として、俯いたままだった。
「まぁそんな落ち込むなって。身体強化でも十分探索者として生計建ててる人もいるみたいだしよ」
(俺からすると対人やモンスター相手には強力な能力だと思うんだけどな。ま~多分そのレベルまでに辿り着くには、それなりにモンスター討伐しないといけないんだけど)
辰馬が石崎の能力を考察していると、教室にチャイムが鳴った。
「そろそろ新しい担任来るから前向いてろよ」
「おう…」
辰馬は先ほどから視線を感じてた方へ向くと山内がニヤニヤと笑っていた。
(石崎を見た後に長谷川をネットリ見ているし…。何だろ…薄気味悪いなぁ)
辰馬には、多くの戦闘経験から確信があった。山内が何か企んでいる目をしていことに。
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