現代にダンジョンが出来ても探索者になりません

@sige02

プロローグ

「チェストォォォ!」


早朝から騒がしい声が道場に響き渡り、修行僧達が巻藁に突きの修行をしている。


「う、もう始まったか…」


眠そうに瞼をこする少年、武田辰馬は入学式で吉林高校の二年生になる。


吉林高校は名門であり文武両道を旨とし、校風は自由を掲げており校則は緩い。


「チョープ!!チッ…躱されたか。ま~た、居酒屋の用心棒をしとるから寝不足になるんじゃ」


寝起きの隙を付いた攻撃を躱し、辰馬が声をする方へ視線を向けると祖父である武田隼人がいた。


隼人は道場の館長であり、辰馬も幼いころから隼人から厳しく修行させられているので若くして師範代になっている。


「おはよう、クソ爺ちゃん。毎度そんな起こし方ばかりするなよな。それとダンジョン帰りの探索者達の暴動を止めるのも家の仕事って言ってたよね…」


ダンジョンは約二十年前に突如として世界各地に出現した。


大きなダンジョンで五階層からなり、モンスターの存在、鉄鉱等の資源があった。


階層は少ないが広大な面積を占めており、調査した結果異空間と結論付けられた。


ダンジョンに入るとモンスターに対応するかのように魔力と呼ばれる能力が発現し、身体の何処か表面に魔石が表れた。


能力は、人の性格・個性が色濃く表れ、能力は一人につき一つが原則である。また魔力を操作することで身体能力の強化をすることも可能だ。


「うむ、お前の父も若い頃はよく街の治安維持のために用心棒しとったものよ」


「でも、その頃ダンジョンないから魔法使う奴いないじゃん。無能力者なのに探索者と戦ってる俺を褒めて欲しいよね」


隼人は呆れた表情を浮かべながら話す。


「確かによくやっておるな、探索者達なるものが表れてからワシらでは太刀打ち出来ないから辰馬に任せて正解じゃったわい」


「まぁ人助けにもなるし、給料も貰っているから責任持ってやるさ」


吉林に二層しかないダンジョンが出来たため、多くの初心者達が押し寄せているため探索者同士での暴力沙汰も多い。


ダンジョン内は国の組織である対ダンジョン特殊部隊がいるため、ある程度安全が確保されている。


「別にモンスターに銃や爆弾が効くんじゃから、態々剣や魔法で戦う意味ないのにのぉ」


「爺ちゃん、人間はロマンを求める生き物だからね。でも長期的に見れば探索者の方がコスパいいみたいよ」


世界各地のダンジョンのモンスターは倒されても数秒でまた出現するのだ。


その間に鉄鉱石の採掘をしなければならない。モンスターだけでなく鉄鉱石も同様に採掘できるようになる。


「全く困ったもんじゃ。国が安全な一階層のみ開放したから観光客として来る連中も増えた」


何処かの国でお金さえ払えばダンジョンに入れるという事をしたせいで、多くの人間が魔力を使えるようになってしまった。


日本も自己防衛という意味を込めて、ダンジョンの一階層のみ開放した。


今までは探索者とは国の所属する軍人等が二階層以上を探索していたのだ。


(ビジネスになるとは言え、ダンジョンに入るだけで魔力使用すると身体能力が倍以上になるから驚愕だよ)


「確かにね~五年前から凄い増えたからね!みんな探索者になるために世界中から来る時代だからね」


「嫌な時代じゃな…。そういえば今日から学校じゃろ?はよ、朝の筋トレしてくるんじゃな」


隼人はそう言い辰馬の部屋から出て行った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


辰馬のトレーニングである一時間四十キロのランニング等の毎朝のルーティンをこなしていた。


(探索者でもないのに、なんでこんな身体能力が高いのかは全く分からないんだよなぁ。日頃から探索者との戦闘により俺の身体に変化があるんだろうけど…。特に身体に異常があるわけではないけど少し不気味だよな)


辰馬の身体は一目見て鍛えぬかれており彫刻のような筋肉ではあるが、世界記録を超えることは無理である。


辰馬はトレーニング後のシャワーを浴び、朝食を取り学校へと向かった。

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