第54話 宇宙怪獣【ギャギャス】

 【ギャギャス】との戦闘が始まった。

俺は本物の宇宙船なんて見たことないけれど、海上自衛隊の輸送艦なら見たことがある。こいつはそれの2倍の大きさは有るだろう。そのでかい口はシロナガスクジラくらいなら頭から1飲みにできそうだ。横からは難しいかもしれないが。


 【ギャギャス】はものすごい勢いで俺たちを捕食しようと突っ込んでくる。まるで波打ち際にいるアザラシを食おうと突っ込んでくるシャチみたいだ!

「食われる!」転移が間に合わなかった。

『【ギャギャス】は準光速のスピードで飛んできたのです。【位置固定結界】に阻まれて転移が遅れました』

(鑑定さんよ!それって俺のせい?準光速ってそんなの早く教えてくれよー!!)


 視界が闇に閉ざされた。【ギャギャス】の腹の中にいるのだろう。

「おーいメアリー、恵、無事か?」

「はい!私、恵は大丈夫です」

「メアリーも元気だよ!」

「魔法が使えるか試してみるぞ。ライト」


 魔法は使えたが魔力が通常の10倍以上必要みたいでグングン魔力が吸い取られていくのが解る。これは【ギャギャス】が吸い取っているのだろう。

魔法の光に映し出されるその光景は腹の中とは思えない光景だった。美しいピンク色の肉壁だ。消化液は無い。従って鼻を衝く嫌な臭いも皆無だ。そう言えば【ギャギャス】は食事の必要は無いと言っていたな。

 こうやって魔力を持つものを丸のみにして腹の中でゆっくりと魔力を摂取しているのだろう。魔力の枯渇した獲物を体外に排出する為の腸は見当たらない。死骸は口から吐き出すのだろうか?


 しかしいつまでもこうやってじっとしていても始まらない。

討伐する方法を考えねば。

「ちょっと火魔法を放ってみるよ」

メアリーが試みた。肉が焼ける美味そうなにおいが漂う。

鑑定してみる。

『宇宙怪獣【ギャギャス】の肉。超絶美味。超高価で取引されるこのステージの収集物』


 試しに食ってみる。

「凄い凄いこんなに美味しいお肉は初めて!!」と恵。


 「ねえ、秋葉さん。このお肉全部収納してしまおうよ」

メアリーの提案にノーとは言えない。俺もそう思っていたところだ。

「よーし、全部切り取ってしまえ!!」

「はい」「ラジャー」


 腹の中の肉を半分くらい収集した頃に【ギャギャス】に変化があった。それまで何の反応も無かったのに暴れだしたのだ。

肉を切り取った外側は硬い外皮だと解かった。4種超合金の刀でもなかなか切れない。この外皮も防具に加工出来ないものだろうか?


 そこで肉の切り取りは2人に任せて。俺は外皮を切り剥がすことに専念した。背中側よりも腹底の方が幾分か柔らかいと感じて切り取っているうちに大穴が開いて星が見える。今なら脱出出来るが俺たちの目的は【ギャギャス】の討伐だ。

体内の肉を全部収納し終わると【ギャギャス】の動きが止まった。ポンと可愛い音がして【ギャギャス】の身体が消えた。

漆黒の宇宙空間にドロップ品が漂っている。すかさずドロップ品を遠隔収納する。宝箱が有った。苦労して収集した10倍以上の肉と外皮がドロップしていた。


宝箱には【ギャギャス】空間への広範囲強制転送装置1個と、個人用転移装置が3個入っていた。個人用はそれぞれが持っておくことにした。【広範囲強制転送装置】は俺が持っておく。

今度は多人数の敵と遭遇した時に使ってみよう。

取り敢えずダンジョン入り口に戻る。

 なんとそこには100人を超える男共が俺達を待ち構えていた。東洋人の他にも西洋人の姿も見える。尋問用に各国の代表格の人間を各2人ずつ【生物保管用空間】に収納して残りの

者どもは早速【ギャギャス】空間へ強制転送した。


数秒しか、かからなかった。

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