第10話 紫苑の実力

俺と紫苑は日本にもう1つ在るS級ダンジョンの前に来ている。【第1S級ダンジョン】と言う名前らしい。

当然ながら俺もまだ潜っていないダンジョンだ

紫苑の立場は俺の召喚ドールということで、ブレスレットの中に入っていてもらう。ダンジョン内に入ったら出て来てもらおう。

手の甲に収集人の印が無い紫苑は1人だけだと排除されてしまうからだ。


このダンジョンは妖怪と言うか異形の者達が集うところだった。

たとえば全身に眼が付いているモンスターとか異様に手足がいくつもくっついていてくねくね動かして、突如その手が複数伸びてきて俺を捕まえようとするモンスター等でそれが階層が深くなるほど襲ってくる数が多くなってくる。


紫苑の戦いぶりを見ていると強制収納を使っているみたいで紫苑に近付くモンスターが次々と消えて行きそのあとに、ドロップ品が現れては消えていく。不思議なことにそのドロップ品は俺のストレージに収納されていくのだった。

それが召喚ドールと俺との繋がりなんだろうな。


紫苑の実力は間違いない。当分の間戦闘は紫苑に任せて置いても良いだろう。

なので、俺は俺で薬草や鉱物、優良な植物を探しては収集していく。

初めて潜るダンジョンだけあって何に役立つのか解からない薬草が見付かった。例えば【添加草】とか、【薬効反転草】とかだ。

今は解らなくてもその内に役立つだろうと思うので収集して置く。

なんだかんだと言ってるうちに99階層まで来てしまっていた。

紫苑は腹が空かないのだろうか?俺は水分補給しながら訊いてみた。

「私は秋葉さんの魔力を頂いておりますのでお腹は空きませんが、料理のスキルを上げるためには口から料理を頂いて味の確認をすることもございます」

「そうか、料理も出来るのか。紫苑の作った料理ぜひ食べてみたいものだな」

「お任せください、ここには安全地帯が有るようですからそこで休憩致しましょう」


俺達はモンスターの侵入出来ない、所謂【安全地帯】に移動してストレージからキッチンセットを取り出して、紫苑の欲しい食材を渡して料理してもらう事にした。


出来た料理は炎竜と氷竜の合い挽き肉ハンバーグだった。超豪華なハンバーグだった。それをパンで挟んで頂く。ソースが無くても美味いのだが紫苑特製ソースを掛けるとご飯にも合いそうだ。余分に作って貰ったので後でハンバーグ丼にして食おう。


ノンビリとピクニック気分でまったりしていると、99階層主の魔人が現れた。

「紫苑どうする?まだ戦ってみるかい?」

「そうですね。魔人相手だと少し不安なので秋葉さんにお願いしてもよろしいでしょうか?」

「判った。後は任せろ」


安全地帯から飛び出した俺は手始めに毒攻撃が通じるか試してみた。魔人をすっぽり覆う結界を作って結界内を毒で満たした。

ワイバーンさえ瞬殺してしまう猛毒なのだが魔人は生きている。毒は通じないようだ。毒がもったいないので毒は収納してしまう。

次は浄化魔法だ。浄化されない。浄化されないが何か苦しそうだ。息が出来ないでいるのか?

結界内には空気が入らない。完全に遮断されているのだ。魔人にも酸素が必要なのか?


魔人の結界内の空気を結界の外に転送させると急激に喉を押さえて苦しみだした。

やっぱりそうか!これは重要な発見だ。今後の魔人討伐の大きなヒントになった。

あまりにも苦しそうなので仏心を起こしてしまって一思いに殺してあげようと結界を解除してオリハルコンの剣を振り下ろした。魔人の首は胴体から切り離された。


「呆気無かったな」

ぼそっと呟くと紫苑が呆れたような顔をして言った。

「秋葉さんだから簡単に倒せたんですよ。普通のS級収集人では結界内の空気を抜いてしまうことなど出来ませんよ。こんなに空気も通さぬ頑丈な結界を張れるなんて、秋葉さんの魔力量は一体どのくらい有るのですか?」

「魔力量なんて測ったことなどないしどうやったら測れるの?」

「外国のダンジョンで魔力量測定器が発見されたそうです。科学者たちが原理を調べているらしいですがまだ普通に使えるほどには実用化されてはいないようですね」

「そうなんだ……まあ俺は今まで魔力切れを経験していないからいいことにしておこう」

「……まあ、秋葉さんですものね仕方ないですわよね」

俺だから仕方ないって、ちょっと引っ掛かったがまあいいだろう。

ここで、【剣術スキル】がA級になった。今ならミスリルゴーレムに傷を与えられるだろうか?その内にあのダンジョンに行ってみようかな。


この階層では【完治草】と【呪い草】と有難いような薬草とあまり有り難くないような薬草が収集出来た。


さあ100階層に降りよう。

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