第5話

そして、俺達は一人一つブランケットを配って貰って羽織りつつ蝶亜副隊長につられ、来た道を戻り外に出る。

建物の中にいたからわからなかったが、今は10月の終盤。冬に上着もないまま外にいるのは辛い。


来たときはあまり見なかったが、ここは東京湾から少し離れたところにある島であり、その上にこの建物や少しの森があるようだ。


外では湊副隊長や、やぐも大佐に何人かの他の隊員。と、湊副隊長たちと同じ服を着ていない‥民間人と思われる人たちがいそいそと動いており、何かを準備しているようだった。その時


「お、お母さん…!?」


と後ろから声が聞こえた。


「お母さん!!!!!?!?!!!」


後ろから一人の女の子が駆け出して、もう一度お母さんと叫ぶ。その声は少し泣きそうな声に近かった。


「あ…い…!?あい!!!!!愛依!!!!!!!」


その子の声で振り向いた人たちの中にはその子を知っている子がいたらしい。母親だ。


「おがあざぁぁぁん!!!!」


「愛依。愛依。あぁ、良かった。本当に……良かった。」



どうやら、感動の再会を果たしたらしい。


その子をはじめに、周りの人たちも続々と建物の敷地から駆け下りて、少し下のところにいる親族の人たちと再会していく。


それを、良かった。良かった。と涙ぐむ隊員たちもまばらである。


そしてとうとう、その場から一歩も動けていない救助者は俺だけとなった。

それもそのはず…だって俺の親兄弟は殺されたのだから。

目の前で…

祖母も祖父も短命ですでに亡くなっている。

つまり、俺には親族がいない…再会する人がいないのだ


これから俺はどうするのだろうか。親族はいない…孤児院に預けられるのか…


どうしようかと、下を向き手に力を込める。

わからない…なぜかわからないが、それと同時にほおに何か温かいものが伝った。

それが涙だとわかったのは湊副隊長がつけている手袋で俺の目元を拭ったから。



「辛いな…真鏡を使った時…周りの人は皆、親兄弟。親族の名前が書かれていたんだ。でも、君だけは…名前と年齢しか出てこなかった…」


「………いえ。もう、そういうことには…慣れました。」


「そうか。」


湊副隊長は、自分の上着を脱ぎ俺にかけてくれる。


「それと…もう一つ。もう一つだけ、情報が見えた。黎、きみ。俺が使った真鏡やここに来るときに使った瞬間移動の時に出た光。見えるだろ」


光。

思い当たる節がないわけでもない。

蝶亜副隊長が使った天瘉のときも、ほのかに赤色のような光が散ったように見えた。

湊副隊長の真鏡は、水色のような光。


「はい…見え…ました。」



「黎。あの光は



異能力が使えるものにしか見えない光なんだ。___________」

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