第2話

救助に来てくれた隊員たちに導かれ、研究所から出る頃には、夜の冷気が染み渡るように彼の疲れた身体を癒してくれた。救出の手際は驚くほど速く、周囲には次々と研究所の者たちが拘束されていく光景が広がっていた。隊員たちは、研究所の人々を手際よく取り押さえ、抵抗する者は容赦なくその場に倒していった。


捕えられていたところは、こんな見た目だったのかと改めて思う。

遠くからは、次々と交わされる短く鋭い命令の声が聞こえてくる。

しばらく経ち、辺りが次第に静まると、最後の一人が拘束され、戦いは完全に終息した。


「これで、片付いたな。」


周りを仕切っているらしき人物。耶雲大佐(やぐもたいさ)と周りから呼ばれている人が周りを見渡しながら呟いた。

その声には、戦いの緊張がほぐれた安堵の色が見え隠れしていた。

彼はこちらを振り返り、安堵した表情で軽く頷く。


「…よく耐えたな。もう心配はいらない。」


ふと周りを見回すと、2人の、容姿が似ている金髪の隊員が何やら端と端に散らばり、立ち位置を整えているように見えた。何かを始める様子だ。


「位置についたか?」


耶雲が確認するように声をかけると、そのうちの1人は無言で頷き、片方はOKサインを作る。

そして、二人が互いに視線を交わしたのを合図に、彼らは同時に地面に手をついた。その瞬間、周囲の地面がぼんやりと輝き始め、光の輪がじわじわと広がり出した。


足元が熱を帯びるような感覚に驚きながらも、目を離さずにその光の動きを見つめていた。光は一瞬のうちに足元を包み込み、あたり一面が淡い光で満たされる。


やがて、ふっと身体が宙に浮くような感覚が襲い、次の瞬間には周囲の景色が一変していた。


目を開けると、そこはさっきまでの研究所とは全く異なる場所だった。

彼らは古びた建物の前に立っていた。

重厚な石造りの外壁と荘厳な造りが、どこか異世界めいた雰囲気を漂わせている。

夜明けの光が東の空を染め、白い暁が静かにその姿を表していた。


久しぶりに見た日光に目を細める。


(こ…こはどこだ)

周囲を見回す。

場所が急に変わったことへの戸惑いと驚きが入り混じっていたが、隊員たちは特に驚いた様子もなく、慣れた手つきで扉を開け中へと入っていった。


「ついてきて、君たち。今から医務室に行って、君たちの体の状態と、身元の確認を行う。それから、それぞれの家に送る。」


耶雲が説明しながら、落ち着いた表情で建物の中へと入って行き、その後ろを追う。どうやらこの場所は、彼らの活動場所のようなところらしい。






ゆっくりと周りを見渡しながら、耶雲の後ろに続いて建物の中に足を踏み入れた。

内装は、少し西洋じみた作りになっていて、廊下は石作りの上に紺色のカーペットが弾かれていた。古い時代の名残が随所に見られ、不思議な威圧感が漂っている。


他の隊員たちも続々と中に入り、慣れた動きで各自の持ち場に散っていく。


「医務室はこの奥だ。」


耶雲はみんなを連れ、長い廊下を進んでいく。

特に思うことも考えることもなく廊下を進むうちに、医務室の扉の前についた。


「まずは診察と治療を行うが、痛みや異変などあればすぐに伝えてくれ。」


耶雲がそう言って扉を開けると、白く清潔な医務室が現れた。簡素なベッドが並び、壁には医療機器が整然と並べられている。

中は、思っていたよりも広く、冷たい光を放つランプが天井に取り付けられ、清涼な空気が漂っていた。

耶雲は、君たちはそれぞれベッドに腰掛けていてくれ。と言って病室の奥に足を進めた。

その声を合図に開いているベッドに皆、腰をかけていった。

埋まっているベッドには眠っている隊員や、療養中の隊員。様々である。


「おーい、湊(みなと)副隊長〜!!いますー?!いますよねー?!また寝てるんですかー?」


耶雲が向かった病室の奥の部屋から、そんな声が聞こえてきた。


そして、耶雲が出てきたと思ったら……白衣を着た、藍色が特徴的な髪を無造作に一つにまとめた人が引きづられていた…


「さぁ、湊副隊長。お仕事の時間です〜。」


「うぅ…僕のゲーム…あとちょっとでフルコンだったのに」


「はいはい、これが終わったらにしてください〜」


「…はぁ…しょうがないなぁ…」


湊はそう言うと、片手で無造作に髪を掻き上げて、眠気を押し払うように軽くあくびをした。

引きづられている状態から立ち上がると、想像よりも身長が高い。

耶雲よりも少し高い。



そして湊は、髪に合わせるような色をした藍色の目で一同を見渡してから

湊は目を瞑り…パチンと指を鳴らした。



「異能力_真鏡(しんきょう)」

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