第22話
『千秋…?』
揺れが修まった車内でシートベルトを外したあたしが、少し驚いてそんな千秋の名前を呼んだその時―――
突然マジェスタの前にバイクが滑り込んで来た。
「ちっ」と舌打ちをした香月さんが一瞬スピードを緩めると隙を見た極連のメンツがマジェスタの回りにバイクをびた付けした。
仕方なくパチンコ屋の広い駐車場に駐車すると、フルスモークの窓越しから極連の人たちはあたしたちを睨んだ。
「開けろや葉山!!」
沢山の罵声が行き来して、ビクッと体を震わすあたしの肩を捕まえた千秋がグッと自分の胸に引き寄せた。
『千秋…っ?』
「しー…。」
歯の間から空気を漏らすようにそう言いながら人差し指をあたしの唇につけて「喋るな」と指示する千秋。
千秋の肩越しに、香月さんが運転席側の窓を開けるのが見えた。
「あっれー?佑真はどうしたよ?」
「…知らねぇな。今日は見てねぇよ」
車の中をジロジロと覗き込む極連の特攻服姿の男。
胸に『打倒金狼』と刺繍をいれてる所を見ると、彼らもGOLD WOLFを敵視してるのがわかる。
「あーあ。神田は後部座席で俺らのヤリコン相手と抱き合っちゃってるよ」
「極連とはシなくて、GOLD WOLFとはスルんだ?」
『打倒金狼』の隣に立った、『WOLF EATER』の文字を刻む男が冷やかしを込めた笑いをあたしに向ける。
その時にギュッと抱きしめる力を強めた千秋。
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