第19話

『ふふっ』




「何笑ってんだよ紫季」




『だって、千秋と香月さん仲良しだから』




「…やっと俺の名前呼んだなっ」




『え?』




「香月だけに"さん"つけてるのはしゃくだけど」




『…え?あたし……、香月さんが大人過ぎて、てっきり千秋は同級生かと…』




「ぷくくっ!俺が大人過ぎて千秋が子供に見えたってよ」




「失礼なやつだなー!」




『きゃあ!』




そう言ってあたしを抱き上げた千秋が、そのまま香月さんのマジェスタに乗り込んだ。




『ちょっ!千秋っ…』




「出せっ!香月っ」




「了解」




『拉致っ!コレ拉致だよっ!』




「あーあ。紫季大変」




『ふざけてないで離してよ千秋っ!何処行くつもりっ?』




後部座席の真ん中に座ってる千秋の膝の上に、向かい合うように座ってるあたし。




『し、しかもこんな体勢恥ずかしいし!下ろしてっ』




あたしの言葉にやっと体を離して目を合わせてくれた千秋がフッと笑った。




「あんま可愛い事言うな」




『……!』




至近距離で、綺麗な顔でそんな事言うから顔を真っ赤にするあたしに




「あれ?何か良い雰囲気?」




顔を近付けて来る千秋…




…え?




……えぇ?!




―――えぇー?!




――ブォンブォン!!




その時、耳をつんざくようなバイクの爆音が聞こえて来た。

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