第17話

「紫~季っ」




――ハッ!と声の方に顔を向けると、後ろにある動物病院の駐車場に、バイクに跨がった男の子がニカッと笑いながら手を振っていた。




『えっ?何してんのっ?』




「何って、紫季を待ってたんだし」




―――あたしを待っていたのは千秋だった。




『佑真が関わったらダメって言ったのにっ、来たらダメだよっ』




「冷てぇし!ずっと待ってたのに!」




通行人はあたしと千秋を交互に見ながら横を通過していく。

当たり前だよね…。

ただでさえ目立つ灰色頭の千秋が、真っ赤でど派手なバイクに跨がって大声出してるんだから。




『なんでずっと待っててくれたの?』




「んー。……なんか忘れらんなくて」




琥珀色の瞳を細めて、千秋は太陽みたいに微笑んだ。




不覚にもその無邪気な笑顔にドキッと心臓が弾んだ。




「それに紫季がまたヤリコンに行っちゃわないか心配でさ」




『行きません!てかヤリコンって言わないでよ!あたしは知らなかったんだってば!』




黒い学ラン、宝狼高校の制服を着た千秋はケラケラ笑いながら自分のバイクのシートを叩いた。




「まぁ、乗れ」




『え?…乗らないよ』




「乗れし」




『ダメだよ、あなたも聞いたでしょ?佑真がダメって―――』




「"あなた"じゃねぇだろ?紫季」




『え……?』




「俺。神田千秋っつーんだけど」




口端を上げながらバイクから下りてあたしに近付いて来る千秋。




…え?…え?!

なんでこっち来るの…?!




「因みに俺は葉山香月っつーんだけど。」




その時、急に後ろから香月さんの声が聞こえて来た。

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