第16話

「速瀬尚斗どこだ」




「ぶっ殺す」




馬鹿の一つ覚えみたいに毎日同じ事を言いながら武器を背負って俺を訪ねて来る身の程知らずの馬鹿たち。




『やってみろや』




余裕の笑みを浮かべた俺は、体一つでそいつらに向かって行く。




脳天に向かって振り下ろされた鉄パイプを少し首を傾げて避けると、よろめいた相手の延髄にかかと落とし。

後から襲って来る汚ぇ奴には跳び蹴りを顎にヒットさせて脳みそを揺らしてやる。




倒れ込んだ男に馬乗りになって拳を顔面に打ち付ける。




―――愚連隊の中で有名な昔話しがある。

…拳が変形する程人を殴った奴が居た。

ソイツはこう言ったらしい。

"俺はお前を殺す為に生まれて来た"

自分の拳から血が流れても、変形しても構わねぇ。

ただ憎む相手を滅ぼす。

その為に俺は生まれて俺は生きてる。―――




そんな伝説の愚連隊の明言を頭の中で響かせながら、俺は何度も拳を打ち付けた。




殴っても殴っても虚しいだけだった。

なのに止まらなかった。

ただ感情が暴れていた。




その感情こそが狂暴な狼だったのかもしれない。




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