第13話

「……でも」




『同じ境遇だって、どこの家もお前ん家みてぇに上手く行くとは限らねぇんだよ』




雲って行くケイの表情。




「……でも……」




『みんながみんなお前と同じ思考じゃねぇんだよ』




なのに俺には




「……でも!」




『どうにもならねぇ事だってあんだよ!!』




なのに俺には……

そんなケイを支える余裕すらなかった。




俺はケイの事を見ないまま煙草を灰皿に押し付けた。




「ケイちゃん」




その時いつから見てたのかオウタロウがケイの名前を呼んだ。




「送ってく。今のソイツじゃまともに話し出来ない」




『てめぇは口出すな』




「いや、出す。ケイちゃんが可哀相だろ。出されたくないなら落ち着けよ」




『俺はいつだって冷静だろうが』




「行こう、ケイちゃん」




戸惑いながらも立ち上がるケイの手首を、俺は俯いたまま掴んだ。




『…行くな』




「……で、でも」




『………でも、何だよ』




お前は冷静じゃない俺の傍にはいてくれないのかよ?




「……わかんない……」




俺は辛そうに吐き出したケイのその言葉を鼻で笑いながら掴んでいた手を離した。俺の胸の中の疑問と、ケイが口に出した答えがリンクしていたから。




『……行けよ』




ケイはまだどうしたらいいのかわからないように立ち尽くしている。




『行けって…!』




……ごめんケイ。

今日の俺はいつもの俺じゃない。




『…明日には…元の俺に戻しとくからよ…』




その言葉が精一杯のケイへの謝罪の言葉のつもりだった。

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