第12話

俺はため息と一緒に煙草の煙を吐き出した。




『俺は、本当の親父との記憶がはっきり残ってる』




やっぱり俺とお前は違う。




『だから吐き気がすんだよ。新しい親父なんて』




やっぱりお前にはわかんねぇ。そう思ったらケイに視線を向ける力すら湧いて来なくなった。




「……じゃあナオは、前のお父さんが恋しくて今のお父さんを受け入れられないの?」




『今の親父にも前の親父にも何も望んでねぇよ』




随分と残酷な質問だな。

心の中で自嘲的な笑みを浮かべた俺。




『俺は"親父"って存在自体キライだ』




"…ナオ…"


そんな時に限って、俺の名前を呼ぶ本当の親父の声が頭の中に響いた。




『だけど今の親父がいないとこの生活は送れてねぇ』




"…ナオ…"


止めろ。苦しくなるから。




『だからアイツが単身赴任した事をいい事に今まで逃げて来た』




そうだ。面倒臭い事は極力裂けて今まで上手くかわして来たじゃねぇか。




『それに…望んだって叶わねぇ事は、初めから望まねぇ。』




そんな冷徹な事が自然と口から滑り落ちて来る自分自身が怖くなった。

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