第11話

『…でもケイは、今の親父が好きだろ?』




「好きだよ」




即答するケイに俺は思わず苦笑した。




ただ、似てるだけ。




同じな筈がねぇ。




『俺とお前は違う』




俺の気持ちなんて誰にもわかんねぇ。

わかる筈がねぇ。

ていうか、わかられて堪るか。




「違うって?何よ?」




『お前にはわかんねぇ』




『何…それ』




俺の言葉に失笑するケイを横目で見ながら、俺はベッドの棚に置いてある新しい煙草を取り出すと、それに火をつけた。




『お前が親父さんに抱くような感情を、俺は今の親父に抱いてねぇ』




そうキッパリ言い切った俺の横顔をじっと見て来るケイ。




『だからオウタロウは俺に言うんだ。「あの態度は良くねぇ」、「もっと上手くやれるだろ」って』




惨めな気分ってのはこの事か?




「…あたし、本当のパパの事、顔も知らないんだ。あたしが生まれて直ぐに離婚しちゃったからでもママがおじさんと再婚して幸せに暮らしてるように、本当のパパも新しい奥さんを見つけて幸せに暮らしてるって、あたしが小さい時にママが教えてくれた。でも…ね、おじさんの事「パパ」って呼べないんだもう「おじさん」で慣れちゃってるのもあるんだけど……」




ケイ。




「…いつか「パパ」って呼びたい」




そんなのは幸せな悩みだ。

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