第10話
「ナオ…」
か細い声が、徐々に俺を冷静にさせて行く。
『…かっこわりぃとこ見しちまったな』
潰れた煙草の箱をごみ箱に投げ入れながら、俺は続けた。
『…あの親父はさ、本当の親父じゃねぇんだよ』
「…え?」
ドアの前で今だに狼狽してるケイに、俺は背を向けたまま手を差し延べた。
黙ってその手を握るケイを引き寄せて隣に座らせると、俺は力無くケイの肩に手を回した。
額を寄せ合うように二人で顔を近付けて抱き合った。
『あの親父は俺が中学ん時にお袋が再婚して出来た親父なんだ』
その時の俺の気持ちなんて誰にもわかんねぇよ。
「同じだよ」
だけど俺を抱きしめる腕にもっと力を入れたケイは意外な言葉を発した。
「あたしの今のお父さんも、あたしが中学生の時に来たんだよ。ユウダイたちを連れて」
それは前々から知っていた事だった。出会ったばかりの時、その話しをされた時うちと"似てる"と思ったから。
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