第8話

階段の電気が微かに俺の部屋を照らしていた。




「ナオ」




まだ落ち着きを取り戻していない頃、オウタロウが俺の名前を呼んだ。

俺はそれに返事をする余裕もない程、暴れる感情を必死になって抑えようとしていた。




「ナオ、あれはよくねぇ」




止めろ。




背後で小さな足音が近付いて来るのを感じた。

オウタロウの影がドアの縁にもたれかかっているのが見える。そして俺のすぐ後ろにはケイの気配がしていた。




「お前がやろうとしてるのはわかる。だけどな、もう少し頑張れるはずだ」




言ってみろよ。何が分かるっつーんだよ。




『……るせぇな』




声と感情を押し殺して、静かに怒りを表す俺。だけどそう簡単には修まらない怒りは、喉仏を煮えたぎる程熱くして、飲み込む唾すら震えさせた。




「…おい。完璧にしろとは言わねぇよ。ただ周りの事も考えろよ」




そんな俺の内面とは対象的なオウタロウの冷静な態度に、堪らなくなった俺はとうとう声を張り上げた。




『…うるせぇっつってんのが聞こえねぇのかよ!!』




背中越しにオウタロウを睨み付けながら、俺の手の中で煙草の箱がグシャッと潰れた。

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