第2話 ところでパンケーキって何よ!
急に兄貴の彼女のジュンさんがうちに来ることになったので、私は謎のパンケーキ作りに駆り出されることになった。着替えて朝ご飯を食べにリビングに降りていくと、兄貴が難しい顔をしていた。
「ところで
……なんで今更それをググっているのだろう?
「卵に牛乳。小麦粉、お砂糖、ふくらし粉、でしょ?」
「それはホットケーキの作り方だ」
「一緒だよ、ホットケーキもパンケーキも」
「何!?」
そこ、びっくりするところなんだ。
「俺はてっきりパンケーキはパンの仲間で、ホットケーキはお菓子だと思っていたのだが」
「パンケーキのパンは食べるパンじゃなくて、フライパンのパンね。フライパンで作るケーキだからパンケーキ、オーライ?」
「お、おーらい」
全く、勉強はできるくせに肝心なところが抜けてるんだよなあ、こいつ。
「じゃあホットケーキのホットって何だよ」
「そのくらい自分で調べなさいよ」
「全く、可愛くないなあ」
ホットケーキの語源を知らなかったくらいで可愛くない呼ばわりはされたくないぞ。
「……へえ、ホットケーキは日本での呼び名、ねえ……」
あ、本当に調べてる。
「フライパンで作る小麦粉を焼いた奴、って定義だとお好み焼きもパンケーキになるらしいな」
「本当?」
「そう書いてある」
本当だ、英語のページでそう紹介されている。
「お好み焼き、美味しそうだね」
「よし、今夜はお好み焼きにするか」
「その前にパンケーキ作るんでしょ、あんたは」
「そうだったな。そうと決まれば買い物に行くぞ!」
……どこまで行っても勝手なんだよなあ、こいつ。
「ジュンさんは何時に来るの?」
「お昼頃来ることになっている。うちでパンケーキランチだ!」
「あ、そうですか」
キリがないから、あまり深く突っ込まないようにしよう。とにかく、昼食のために何やらパンケーキを作るというのがゴールのようだ。
「でもパンケーキ作る前に、片付けとかはいいの?」
「それなら夜のうちに全部終わっている」
……言われてみると、リビングがめっちゃきれいになっている。雑巾がけまでしっかりされていて、細かいところまで埃を払った跡が見られる。
「随分張り切ったね」
「ジュンさんのためなら、俺は奈良の大仏だって磨くぞ」
私は本当に奈良の大仏を磨きに行こうとする兄貴を想像して、あんまり洒落になってないなと思った。
「せっかくキレイにしたんだからな」
「別に私、関係ないし」
「ああ! ソファーのカバーが曲がった!」
全く、朝からうるさいな。おちおちソファでゆっくりできやしない。
「とにかく、朝飯食ったら買い物に行くからな!」
「はいはい」
うちの近くのスーパーは朝9時から開店している。そこで材料を買って作れば、お昼前には完成するだろう。
「ついでにお茶菓子なんかも買おうか」
「あと夕飯の材料も」
うちはママが働いているから、高校の途中くらいから私が夕飯を作ることが増えていた。たまにパパや兄貴も作るけど、二人とも料理のセンスがないってよくママに怒られている。
そういえば、こいつは一体どんなパンケーキを作るつもりなんだろう?
頭の中がジュンさんで一杯で、文字通りお花畑になってるんだろう。
今更怖くて、ちょっと聞きたくないなあ……。
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