嶺辺路【壱】『多元宇宙丸と時空の裂け目』
——妖しき遺失物、拾うべからず。
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弘安四年、水無月。
鎌倉幕府七代将軍、
二度目の蒙古襲来の
一つには旧勢力、鎌倉時代前期から活躍する
そしてもう一つは鎌倉時代後期から台頭し始めた新興勢力、
それら二つの意思決定機関では、
御内人の一人であり、
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ある日のこと……
青い空。
白い雲。
「はっ!」
「せぃや!」
「とぉう!」
大柄な
宇宙丸は今日も、軽々と
…………青い空。
…………白い雲。
…………黒い裂け目!
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「…………ファッ!?」
宇宙丸は思わず跳び
「なんだこれは! なんと
宇宙丸は、立ち上がり、恐る恐る、裂け目に近づく。
「
真っ黒な裂け目の中を、そぉっと、
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「む? 何だ? 何かがこっちに!」
二つの物体が、宇宙丸に向かって、勢いよく飛んでくる!
「おっと! 危ない!」
間一髪、避け切れた。
裂け目からやってきたのは……
__🗡️🍕__
宇宙丸は、警戒しつつ、太刀を観察する。
「こっちは太刀に違いない。黒くて、やけに大きい。そして、この陰気な
「こっちの薄い扇形のものは……なんだ? 見たこともない。だが、美味そうな匂いをしているな」
宇宙丸は姿勢を低くして、太刀に貫かれた扇形に、顔を近づける。
「香ばしく焼いた穀類の生地の上に、
宇宙丸は、その皮のようなものを、指先で
「ほんのりと、温かい」
引っ張ってみる。
するとそれは、びよん、と伸びた。
「なんだこれは!? やけに伸びるぞ! まるで枕に垂れる
さらに、伸ばしてみる。
「五寸、一尺、二尺、三尺……四尺!?!? 太刀と同じくらいの長さになったぞ! いったいなんなんだ、これは! 食べ物には違いないが……」
宇宙丸が謎の扇形の食べ物に夢中になっていると、遠くから、ぱかぱかと、地をせわしく打ち鳴らす音が、聞こえてきた。
愛馬の、
悟は、黒い裂け目と妖しい太刀からは少し離れたところで、止まった。
「おーう、悟よ、散歩はもう終わりか? この美味そうな匂いを
主人にそう言われた悟は、それ以上近づくよりむしろ、数歩、
「どうした悟よ、ほぉら、見てみろ、この妙な太刀に刺さった扇形を」
宇宙丸は、悟の首輪を引いて、無理矢理太刀の方へと近づけようとするのだが……
ヒヒヒヒィーン、と大きくいななき、暴れ出す。
「おっと、悟よ、どうした? 何を恐れている? この太刀か? それとも扇形の方か?」
宇宙丸は暴れる悟を抑えようとするのだが、その力は、どんどん強さを増していく。
「くっ、悟よ……
悟は跳ねるように暴れる。
その暴れ具合ときたら、
宇宙丸は耐え切れず、首輪を持つ手を振り解かれ……
悟は、その場に
「ふぅ、臆病なやつめ。そんなにこれが怖いか?」
宇宙丸はそう
裂け目は、消えていた。
「おっと、裂け目がどこかに消えてしまったわ。不思議なものよ……」
太刀の方は依然、地面を、扇形ごと、突き刺している。
「どれ、ものは試しだ。こいつを一振りしてみるか」
宇宙丸は、太刀の柄を握る。
その瞬間、暗紫色の煙の放出は、ぴたりと止まる。
そして、地から引き抜いた。
「むぅ……やけに重い。が、拙者の手にかかれば、こんなもの、
宇宙丸は、片手でそれを、持ち上げた。
「それにしてもこの謎の扇形の食べ物、やけに美味そうな匂いを放つ…………」
宇宙丸は、扇形を太刀から外して、口元へ近づける。
「いや、毒を盛られている可能性も
宇宙丸は、その扇形を邸宅の床下の冷暗所にしまうと、妖しい太刀を使って、再び己が剣技を磨き始めるのだった。
〈
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