お願い完了

 代わりに似たようなコートをもらい、私のものは預けたままになった。

 メンズ向けの服らしいけど、私の全身を覆い隠すにはちょうど良い大きさ。

「修繕が終わったら、さっき書いてもらった連絡先に。支払いは取りに来たときでいい。後は何かあるか?」

「借りた服の分の代金はどのくらいになりそう?」

「それは無料でいいよ」

 気前がいいね。

 客の服を直してる間、全裸でほっぽり出したなんてウワサが立ったらかなわない、なんて独り言は聞かなかったことにすれば。

 ついでに、気になっていた事を一つ聞いてから出て行こう。

「この街って、あんまり治安が良くなかったりする?」

「ここは安全ないい街だ……って、この前までなら言えたんだけどなぁ」

 店主は残念そうに頭を垂れた。

 話を聞くとついこの前、別の海氷街の製氷機が壊れたそうで。その結果、海氷街をささえる地面の氷はだんだんと溶けていき、じきに街ごと消えていく。

 残った人たちを海に投げ捨てる訳にもいかないから、難民としてこの街で住むところを貸してあげている。だからこの街は、二つの街が入り混じるいびつな状態。

 結果、治安も悪化していっている。

 別に逃げてきた人のせいってわけじゃなくて、どうしても人が増えると厄介が増える。

 私が変なヤツに絡まれたのも、その余波なのかも。納得がいった。

「教えてくれてありがとう。それじゃ、適当に時間を潰してくるね」

「ああ、また後で」

「あ、ちょっと待って」

 どこに行こうか考えながら店の外に出ようとしたとき、ヨウナに呼び止められた。

「行く場所は決まってるの?」

「今考えてたとこ」

「なら、私についてこない? これから、チーム練習があるの」

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