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 今日のトップニュースは、へんかいひようで作った新型の車について。

 新しく車が開発されたわけじゃない。別に今だって、目の前を氷のボディでできた車が道路を走っている。

 多様なニーズに対応して、カラーバリエーションが増えたらしい。

 ネット上のニュースサイトには、そんな宣伝じみた話が流れていた。

 過去の加工品と現代の氷が入り混じる現状を見た過去の人と未来の人が、それぞれなんて言うか、機会があれば聞いてみたい。

 変異海氷はプラスチックより加工しやすく、コンクリートより堅く、鉄より鋭い。そしてとある条件下では全く溶けることのない、文字通り変な海の氷。

 だから地面にも、建物にも、皿やコップにも、包丁にもなる。もちろん、ナイフや銃にも。

 かつては現実に見る夢と言われた変異海氷も、もう新しい技術ではなくて、生活にありふれた材質に。

 陸地は全て沈んだけど、これほどの技術を手に入れたんだし、人類にとってはプラマイゼロってやつかもしれない。

 海水を凍らせて、海に浮かぶ街にとっては無限の材料。

 でもさっき言ったように、とある条件がある。

 変異海氷を作り、保つためには、専用の製氷機が必要。絶対に溶けないわけじゃないし、メンテナンスやリフォームだって必要。

 材料が無限でも、氷の領土の大きさ、作れる物資の寮は、製氷機の性能に依存する。

 結果、一つの市くらいの広さで浮かぶ氷の上に、海氷街と呼ばれる生活拠点を作り、それが船のようにたくさん海の上を漂い、さらにその上で人が生活している。

 氷と氷を氷の船で移動し、あるときは移住、あるときは貿易、そしてあるときは――戦い。

 そうやって、人は生き延びている。

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