第10話 馴染み
名前:倉沢琉生
性別:男
年齢:16
スキル:【テイマー】【鑑定】【アイテムボックス】
装備品:『ナイフ』『レザージャケット』
アイテム:魔石×3
パーティー:無し
従魔:『シャドウナイト』
こうしてアイテム欄を見ると一目瞭然なように、僕は洞窟を出るまでに魔石を3つゲットした。その確認のために一応ステータスを調べたところだ。
といっても、自分がモンスターを倒して得たものじゃない。疲れ果ててる上、体もあっちこっち筋肉痛で痛むのでそれどころじゃないしね。
つまり、道中で落ちていた魔石をありがたく頂戴したってわけ。掌に収まる程度の大きさだけど、輝いてるのでわかりやすかった。
おそらく誰かがパーティーを組んで洞窟を訪れた際、モンスターを倒したときにドロップしたものなんだろう。
んで、モンスターと相打ちになった、あるいは余裕がなくて気づかなかった、はたまた、即湧きしてきたモンスターから逃げたことで放置されたってところじゃないかな。
その中にはもちろん、拓司たちが落としたものが含まれてる可能性もあるけど、それでも無駄にはしたくないからね。
【アイテムボックス】を使用すると、宙に浮いた半透明の小箱が出てきて、その中から魔石を取り出すこともできたので安心した。
従魔のシャドウの特殊能力『影移動』を使って世界の塔を目指す頃には、周囲はすっかり暗くなっていた。とはいえ、『暗視』のおかげもあって、容易く塔の入り口まで到達することができた。
行き交う人々の様子を見ると、ほとんどみんな疲れきった顔をしてるのがわかる。
そりゃそうか。ボスと強制的に戦わせられる前に、なんとか戦闘経験を積もうとしたり、魔石を獲得したりしようとしてたんだろうしね。中には一人で呆然と佇む子もいた。誰かを待っているのか、それとも捨てられたのか、詳細はわからない。
かくいう僕もパーティーを除名された一人なんだけど、今は従魔のシャドウがいるからね。本当に心強い。
というか、すっかり安心したせいかお腹が鳴ったので、まずは食べ物を購入することにした。
世界の塔の代表者である召喚者の少女リーフも、食べ物を売ってる店があるって言ってたから探せばどこかにあるはず。
「あ……」
出入口から一階のフロア全体を見渡してみると、外側にあるドアの前で兵士が『フードショップ』と表示されたチャットを立てていて、その前に行列ができてるのがわかった。どんな食べ物が売られてるんだろう?
「えぇっ……!?」
ドアから出てきた人が手に持ってるのを見て、僕は仰天した。
あ、あれはどう見てもカップラーメンだ。まさか、異世界にそんなものがあるとは……。
でもよく考えたら、現実世界から僕たちを召喚できるんだから、食べ物だって召喚できても全然おかしくないんだよね。
異世界特有の変わった食べ物よりも、現実世界の食べ物のほうが僕らにとって馴染み深くて食べやすいってのはわかるだろうし。
他にも、サンドイッチや焼きそばパンを美味しそうに頬張りながら出てくる人たちがいて、僕を含む待ち人たちから羨望の眼差しを集めていた。
しかも、店内にある商品はどれも魔石1個で買えるらしい。そんな声があちらこちらから聞こえてきて、周りから歓声や早くしろという怒号、さらには『ギブミーフード!』なんてチャットが一気に立てられて笑い声が上がっていた。
そりゃそうか。食べるっていうのは生きるってことだからね。まだ召喚された当日だから麻痺してたところはあるけど、食べなきゃ何も始まらない。
僕もしばらく並んで、魔石1個でカップラーメンを購入した。奥に置いてある箸やポットのお湯は無料なので、それを注いで店を出たところだ。
中は現実世界のコンビニをさらに簡略化させたみたいなところだった。陳列棚に商品が並べてあるだけでレジは見当たらない。
入口にいる、槍を持った厳つい兵士に魔石を渡すことで一人ずつ購入できる仕様だ。行列ができてたのも納得できる。
中にはその兵士とカップラーメンの旨さについて談笑してたのがいて、ブーイングを食らっていた。そりゃそうだ。待ってるほうの身にもなれって。
さて。食べ物を確保したなら、あとは泊るところを探さないと。
確か、一階じゃなくて二階のほうにそれっぽいのがあったような?
というわけで奥にある螺旋階段を上っていくと、例の場所が見えてくる。
ドアの前で『ホテル』と表示されたチャットを立てた兵士がいて、そこも人で大賑わいだった。周りの話を聞けばわかるけど、魔石1個で個室に泊れるらしい。はあ。大人しく並ぼう。みんな本当に考えることは同じだ。
……おっと。とっくに3分経ったってことで、僕は待ってる間にラーメンを食べることにした。うん、少し伸びてるけど美味しい。やっぱりカップラーメンはシーフード味に限る。カレー味も捨てがたいけど……。
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