第3話

 大本重徳様

 お返事いただきありがとうございます。実に勝手きわまる内容で吐き気が込み上げてきました。まあ吐くものなど何もありませんが。彩音と浮気し、自分だけは結婚式を挙げたいという図太すぎる神経には思わず感嘆の声をあげずにはいられませんでした。いや、よく考えればそんな図太い身勝手さを持ち合わせているからこそ、他に彩音という欲求解消用の女をつくり、僕を殺すことができたんですよね。ある意味納得のいく文章でした。

 結婚式、どうぞ挙げてください。ただし僕も出席します。特に席などはご用意いただかなくてかまいません。僕についての懺悔するスピーチの時間もいりません。大本主任は大本主任の好きなように振舞っていただいて構いません。僕は僕で好きなようにしますので。大丈夫です。あなたの奥様となる女性には何もいたしません。ご家族にも、関係者にも。僕は大本主任と違って、無関係な人々を巻き込みたくはありませんので。亡霊になってもそこまで身勝手になるつもりはありません。そうなれば地獄行きですので。そういえば閻魔様と話す機会があったのですが、大本主任がこちらの世界に来たとき、あなたは無条件で地獄行きらしいですよ。地獄の世界を垣間見ましたが、あれはひどいものでした。獄卒と呼ばれる鬼が大きな金棒や出刃包丁を手に罪人たちを蚊のように叩き潰し、全身を微塵切りにしていくのです。でも罪人は死ぬことができず、獄卒が何か唱えると体は復活し無限の苦痛を味わうことになるみたいです。心からあなたを殺さなくて良かったと思っております。すみません。話が脱線してしまいましたね。

 とにかく、結婚式はご自由になさってくださいね。

 小芝智也

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