第15話 冠①
ここに受け入れられてからの日々は安泰している。
もう2週間が経過しようとしていた。
住民と仲良くなったことで、日々の仕事以外にも、頼まれ事を手伝ったりと、探鉱場の問題解決に取り組んだ。
特異体質については、あまり説明をしていない。
どこから話すべきか纏まっていないからだ。
結局3割程度、体質についてのみ。
それ以上は語っていない。
最初は質問攻めにあっていたが、色々と汲み取ってくれたのか、今は落ち着いている。
誰しも語ることのできない話はあるということだ。
無造作に触れてよい場合とそうでない場合がある。
とりわけ僕の過去はあまり語りたくない。
いまは、まだ。
そんなことを考えていると、馬の蹄の音がしてきた。
ここまで登ってきたのだろうか。
そもそも馬車を見たのは久しぶりだ。
この街は砂漠に囲まれているためか、文明が発達していない。
大きな都市と比較するとその大差は歴然といえる。
馬車から降りてきたのは、裕福な貴族のような装飾を来た細身の男。
男は敷地内に躊躇うことなく入ってきて、そのままジモンさんと話をしていた。
定期徴収という単語が聞こえる。
揉めている様子も感じ取れたが、話が終わるとそそくさと馬車に乗り、山を降っていた。
「何だったんです?」
暫くしてから、答えてくれた。
「この街を仕切っているやつに媚びを売る役人というところか。そいつの仕事だ。毎月決まった日にやってくる」
「さっき、何か揉めていたようでしたけど…」
「ああ、値上げだよ。商売上がったりだよ、くそったれ」
ジモンさんは、椅子に腰掛け、空を見上げる。
「これも全部あいつのせいだ。あいつがこの街の実権握ってから酷くなっちまった」
「あいつというのは…?」
「…グンジ。グンジ・バスコット。俺の、腹違いの弟だ」
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