第3話 広島へ

 カップルなら新幹線は当然D・E席だ。


 乗り物は嫌いじゃ無いし景色を楽しみながらの旅も大好きな二人だが、なにしろ新婚ホヤホヤである。二人でいるとあっという間に過ぎてしまう時間が今日は更に加速度を増している。


(後悔しないように一緒に過ごして行こうね――)


 そう思っているうちに列車は新神戸を過ぎ、岡山が近づいてきた。

 

「そういえばさ、あたし広島風のお好み焼き食べたことないんだよね」


「へえ〜! あんなに美味しいのに。ま、でも世の中の大半は関西風って感じあるからね」


「そうだよね。お店もあんまりないでしょう?」


「うん。俺広島派だからいつも店探しで苦労する」


「楽しみだな〜。画像では見たことあるけど味の想像がつかない」


「初めて食べるんだね。ある意味羨ましい。どんなリアクションするか俺も楽しみだよ」




 ◆



 広島市内中心部で循環バスを降りる。ホテルまでは数分といった距離。知らない街を二人で歩くのは毎回胸がいっぱいになる。自分たちのことを誰も知らないし、特に興味関心を持って近づいてくることも無い。それを孤独や寂しいと捉える人もいるだろうが、綾乃と亮介にとってはこの上ないとしていつくしむのだった。誰にも邪魔されずに、二人だけの世界を二人だけで楽しむのだ。


 チェックインした部屋は2面彩光の角部屋。そのうち一面はバスルームだ。


「見て見て〜、すごいすごい! お窓も大きいしお風呂に浸かりながら下の大通りが見える!」


 事前に画像で確認していたが実際の臨場感たるやかなりのものがある。綾乃が喜んでくれて亮介は心から嬉しかった。

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