第4話 豚キムチが繋いだご縁


 予定より30分遅れで朝食バイキングに到着。和洋充実したメニューの中、ご当地メニューも並んでいる。食べ過ぎないように注意しながら選び、二人は席についた。


「そうそう、夜は小なんとか堂っていうお好み焼き屋に行こうと思うんだ」


「へぇ〜、どんなお店なの?」


「広島出身の同僚に教えてもらったんだけど、何食べても美味しいらしい。ていうか豚キムチが妙に旨いんだって」


「あはは。もうそれお好み焼きじゃないじゃん」


「ほんとだね。それで、名前をど忘れしちゃった。小、小、小……なんとか堂。う〜ん」




「小角堂じゃないですか?」




「そう! それだ!」


 テンポの良い掛け合いが成立した。助け舟を出してくれたのは隣の席で食事をしている青年だった。


「すみません、しゃしゃり出ちゃって……」


「いや、いいんですよ。それより助かりました。どうしても出てこなくて」


 と、亮介は喉を人差し指でトントンとジェスチャーした。


「豚キムチでピンと来たんです」


「よく行かれるんですか?」


「はい。広島出張の夕飯はほぼ毎回ここですね」


「そうなんだ〜、なんかあたしすごく惹かれてきた」


あっと言う間に三人の会話の空気ができた。初対面でも合う人とは合うものだ。


「いいこと考えた。あの、よかったら今晩ご一緒させてもらえませんか?」


「いいんですか? お二人の邪魔にならないですか?」


「いえいえ。みんなで食べた方がおいしいと思うし、ね」


 綾乃はそれに応えてニコリとううなずく。この親切なT君は29歳の営業マン。亮介は早速連絡先を交換し、夜18時に店の前での待ち合わせとなった。

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