第2話 私たち、結婚しました。

 式や新婚旅行は一旦先送りすることにして2006年5月、亮介綾乃夫妻が誕生した。とはいっても、二人きりの新居に引っ越して以来事実上の夫婦生活が始まっていたから目には特に新しいことも無かった。しかし、二人にとっては全く別世界だ。


「妻の綾乃です、って紹介できるの、すごく嬉しい」


 目を輝かせて亮介が言う。


「あたしもよ。でも、不思議だなぁ。亮介君とこうなるなんて」


「本当だね。つい最近まで友達の奥さんだったんだもんね。あ、そうそう、今度出張で広島に行くことになったんだけど、綾乃と離れるの耐えられそうにない……」


「そうなんだ。あたしも寂しいな」


「俺も。綾乃がいないなんて考えられないよ」


「……ねぇ、あたし一緒にいっちゃダメ?」


「いいね! それ。ていうか、超いいアイデア! 行こう、行こう!」


 新婚旅行の前哨戦だ。ワクワクする亮介。満面の笑みの綾乃は目を合わせたまま亮介を優しく包み込んだ。半目で微笑む綾乃の背中に両手指を走らせる亮介。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る