残党狩り

 今日もミーシャは罪人を追った。屋根の上から追跡を続け、相手の心が折れるまで一切の攻撃はせず。向こうから仕掛けられない状況を維持した。


「クソッ!」


 元執行人の男は路地へ路地へと入り組んだ迷路のような場所へ行くが、上を見上げるたびに執行人ミーシャがいた。男は呼吸を乱していた。しかしミーシャは平然としていた。


 光の銃を取り出し、相手を煽る。発砲音が響いた。小鳥の鳴き声ではない。火薬の爆発音だ。男は倒れ、音のした方を見ると部隊いた。同時にミーシャはその場を離れ、同時に男の体が発光した。


 大爆発が起きた。周辺一帯が更地と化し、恐らく発砲したであろう部隊も巻き込まれた。砂埃が大きく舞い、被害の薄い市民たちは騒いだ。


 ミーシャは屋根上で、砂埃がある程度収まるまで観察を繰り返し、適当なタイミングで入った。死体が散乱している。部隊は見られず、市民の死体だけが確認できた。


「おぉ!これは執行人様ではありませんか!」


 再度、発砲音の聞こえた方角から部隊が現れた。


「残党狩りなど私たちにお任せ下さいよ!」

「―――そうだね。任せるよ。ちなみになんだけど、市民を巻き込んだのは意図的?大した度胸だね」

「もちろんですとも!上からは許可を得ています。今度とも、我ら12小隊をよろしくお願いします」


 笑顔に背を向けてミーシャは現場を去った。死体の破片が所々に映るが、ミーシャは全てを無視した。


「あ、リュドミラ」

「や、爆発音がしてね。しばらく待っても来なかったから、一応確認しに来た。失敗でもした?」

「失敗?殺せれば成功なんでしょ?問題はないはずだよ」

「うーん、君の顔を見た限りでは不満そのものだけど」


 ミーシャの顔は相も変わらず真顔だった。しかしリュドミラには分かるようだ。


「リュドミラ、全員病気なんだよ。殺すのに疲れた執行人たちは反逆をした。たぶんだけど、これが真意だと思う」

「――――この仕事止める?そもそも、君の保護対象はとっくの昔に外れてる。好きにしなよ」


 リュドミラは自分の仕事場への帰路へ着く。ミーシャはリュドミラを見送った。


「もう、私の仕事じゃない」

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