二人の侵入者

 ブリタニアールの関所が見える位置まで二人は来た。橋の上でミーシャは関所を観察している。


「ミーシャさんは、擬態擬人が得意ってリュドミラさんから聞きたけど、どうするの?」

「ついて来て」

「え?ちょっと待ってよ」


 完全無視でミーシャは関所へと向かう。信じられないと思いつつも、ソニアはそれに続いた。


「私だ。開けてくれ」

「了解しました!」


 大きな門はミーシャの一言で開いた。ソニアは啞然とし、そそくさとミーシャの元へ駆け寄る。


「ん?こちらの方は?」

「私の連れだ。気にするな」


 二人はあっさりと国王の居る都市へと侵入した。門の入り口というのもあって、かなり繫盛している。


「あんな簡単に騙せるの?」

「私の擬人はね、どっちかっていうと洗脳に近いの。だから侵入に関しては任して。他は任した」

「そう、なんだ。分かった。任せて」


 二人は高台へそびえ立つ居城を目指す。ここからは地図などがなくとも誰でも向かうことができる。


「ミーシャさん、あのお城に行ったことある?」

「まぁ、あるけど、ソニアがイメージするもんじゃないよ」

「へぇ、でもあるんだよね。だから今回の任務に選ばれたの?」

「そんな感じ」


 ソニアを始めた雑談で暇な移動時間を潰した。ソニアは目を輝かし街並みを楽しむが、ミーシャは目もくれない。つまらないといった表情で歩き抜けた。


 居城の入り口、つまりは高台と街を繋ぐ大きな鉄製の門の前まで来た。


「止まれ!」

「私だよ。開けて」

「あ、失礼いたしました。直ちに門を開けろ!」


 ソニアは再度啞然とした。いま目の前で開く門を背景に、ミーシャを見つめる。


「ん?ほら、行くよ」

「う、うん」


 当然のようにミーシャたちはターゲットの住む居城へ侵入した。ミーシャは真っ直ぐと城の中央へは向かわず、街並みを一望できる東の塔へと歩む。


「あれ?玉座じゃないの?」

「今は昼時だから、たぶん東の塔だと思う。玉座は毎日使うもんだけど、あんまりいないから」

「そうなんだぁ。分かった」


 ミーシャに言われるがままソニアは続く。数多の兵士と遭遇するが、ミーシャの持つ洗脳に近い力で攻略した。王様の自室前までその光景に、ソニアは慣れることはなかった。


「交代の時間だ。空けてくれ」

「了解です。お疲れ様でした。」

「あぁ、お疲れ」


 ミーシャは二人の兵士を見送る。


「正解っぽいね。兵士がいた」

「そうだね。じゃあ、こっからは私に任せて」

「うん、頼んだ」

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