第16話 爆速賢者の贈り物
ある年のクリスマス・イヴ。
妻は思った。この黄金色の長い髪を切って売れば、夫の懐中時計をつなぐための、プラチナの鎖が買える。でもこの髪は、夫がいつも愛おしげに撫でてくれるし、正直言って私自身だって大好きだ。やっぱり切ったりしないで、今年は銀の鎖で我慢してもらおう。
夫は思った。この懐中時計を売れば、妻の髪をすくための、鼈甲の櫛が買える。でもこの懐中時計がないと仕事で非常に困る、場合によっては給料に響き、ひいては妻に苦労を掛けるし、妻だって「素敵な時計」っていつも言ってくれる。正直言って私だってとても気に入っている。やっぱり売ったりしないで、今年はメノウの櫛で我慢してもらおう。
2人は、最上級ではないけれど、その時自分が贈れる最大のものをお互いにプレゼントした。大切なのはモノではない。大切な人が大切なものを喪ったと知った時の、相手の悲しみをおもんばかり、結果として自分自身をも大切にすること。それが本当の愛情なのだと再確認した2人は、このあと滅茶苦茶セックスした。
爆速昔話 しゅら @ashurah
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