「使い捨て」文化

山谷麻也

闇バイトの温床

 ◆図星

「コストカット型経済」とは、うまく言ったつもりだったろう。

 これを岸田総理(当時)から聞いた時、筆者は逆にゾッとした。


 バブル崩壊後の「失われた三〇年間」のことを指したものだが

(それを言っちゃあ、おしまいよ)

 くらいの重大発言である。


 これまで人件費を削減してきたことに対する認識があった、ということだ。

 当の経済界からもクレームはなかったように記憶している。 


 ◆賃上げは解決策か

 つまりは、正社員、正規雇用を抑え、派遣やパート、アルバイトなどで急場をしのいできたということか。

 非正規の方々が労働条件・職場環境に満足していればなんら問題はないが、実態は真逆に思える。


 単に賃金を上げればいい、というレベルの話ではない。筆者の知る限り、立場が弱いのをいいことに、人権侵害さえ横行している。


 ◆ホワイト案件

 ところで、最近、闇バイトが大きな社会問題になっている。

 SNS(会員制交流サイト)で「ホワイト案件」などとうたって、実行役を集める。隙間バイトの感覚で応募し、果ては強盗殺人犯になった事案もある。


 警察は

「絶対に応募しないように。結局は使い捨てになる」

 などと警告を発している。


 ◆犯罪を生む風土

 海外の事情に詳しくないので、ここからは憶測になる。

 もし、闇バイト事件が日本特有のものであるとするならば、人権やコンプライアンス(法令順守)など二の次だった日本の企業風土に、相通じるものがあるのではないか。

 だとすれば「使い捨て」文化も行き着くところまで来た感がある。


 どうか筆者の思い過ごしであってほしい。でないと、闇バイトの根絶など、夢のまた夢だ。いずれにしても、根は深い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「使い捨て」文化 山谷麻也 @mk1624

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ