第4話
1980年9月10日
健一はNHK会計部の資料室に潜入し、不正取引の証拠を探していた。途中で遭遇した警備員を気絶させ、資料室にたどり着くと、驚くべき証拠を発見。芸能界や政界の有力者の名前が不正取引に関わっていた。
その時、数人の男たちが現れ、激しい格闘が始まる。健一は冷静に彼らを制圧し、無事に帳簿を手に入れたが、真実を暴くことで自分や春美に危険が及ぶ可能性も感じていた。
それでも決意を新たにし、健一は帳簿を抱えて夜の東京の街へ。「春美、待っていてくれ。俺たちの平穏な日々を、きっと取り戻す」と心に誓い、未来への道を歩き出すのだった。
健一がNHKの不正を暴くための証拠を手に入れてから数日が経った。その夜、彼は春美と再び会うため、二人の行きつけの小さなバーへ向かった。低い照明とジャズの音楽が流れるその店は、二人にとって穏やかな時間を共有できる特別な場所だった。
春美が健一を見つけて微笑みを浮かべると、健一も思わず笑みを返した。二人は少し緊張した面持ちで座り、グラスを軽く鳴らした。健一はそっと彼女の手を取ると、低い声で話し始めた。
「春美、今回の任務が終わったら、俺たち二人でどこか遠くに行かないか?もうこんな危険な生活から解放されて、普通の暮らしを送りたいんだ」
彼の言葉に、春美は驚きと安堵の表情を浮かべ、しばらく彼の顔を見つめていた。そして、静かに口を開いた。「健ちゃん、ずっとその日を待ってたの。でも、本当にいいの?あなたがしてきたことは、正義を守るためでしょ?」
健一は軽く笑い、「それでも、春美と一緒に平穏な時間を過ごしたい。正義を貫くのも大事だけど、君との未来も大切だと思うんだ」と言った。その声には、これまでの険しい任務を乗り越えてきた彼の本心が滲んでいた。
春美は少し涙ぐんで、彼の手を握り返した。「健ちゃん…私も、ずっとそばにいたい。危険な任務が終わったら、静かな海辺の町で小さな喫茶店でも開いて、二人でのんびり過ごしましょう?」
その約束に、健一は静かに頷いた。二人の間に温かな時間が流れ、バーの柔らかな音楽が二人を包んでいった。
健一は新しい挑戦を胸に、大河ドラマ『源義家』の執筆のため、源義家ゆかりの地へと旅立った。1980年代の時代背景とともに、壮大な歴史ロマンを描きたいと考えていた彼は、今の日本を象徴する俳優たちでキャスティングを構想しながら歩いていた。
「義家にはやっぱり、高倉健さんの存在感がぴったりかな…いや、近藤正臣さんも渋くて魅力的だな」健一は迷いながらも楽しく構想を広げていた。「ライバルの清原武衡の影のある雰囲気には松田優作さんか、それとも渡辺謙さんあたりも…」
ふと、足を止めて周囲を見渡すと、薄暗い林に霧が立ち込め、不気味な気配が漂い始めていた。突然、地面から低いうなり声が響き、何か大きな生き物が動く気配がした。健一は緊張を感じ、身構えた。次の瞬間、木々の間から巨大な影が現れた。
それは体を覆う鱗と鋭い爪を持つ、まるで伝説の中に登場するドラゴンのような怪物だった。健一は一瞬目を疑ったが、直感がこれが現実であることを告げていた。モンスターは鋭い牙をむき出しにし、今にも襲いかかろうとしている。
「まさかこんなところで、モンスターに遭遇するとは…!」健一は冷静さを保ちながらも、瞬時に逃げ道を探した。だが、背後からもまた別の怪物が現れ、逃げ道をふさがれてしまった。
「このままではいけない…!」と覚悟を決めた健一は、手近に落ちていた木の枝を手に取り、モンスターたちに立ち向かう決意をした。しかし、次の瞬間、頭の中に浮かんだのは義家の姿だった。義家なら、どんな状況でも勇気を持って立ち向かったはずだ——そんな気持ちが健一の心に力を与えた。
「よし、ここで義家の魂を見せてやろう!」
健一は全身に力を込め、枝を剣のように構えて、勇ましくモンスターに立ち向かった。彼の視線には恐れはなく、むしろ不思議なまでの冷静さが漂っていた。その姿はまるで、義家その人がそこに降臨したかのように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます