第2話



 俳人の、飯田蛇蝎、は、秋にちなんだ5日後の句会の兼題を、じっと眺めてた。


 黒々と大書された二文字。

 そこには、「穭田ひつじだ」とあった。


 この字は、マニアックと言えばそうだが、蛇蝎は知っていた。意味は、「刈り取られて、すこしひこばえのある秋の田んぼ」というような意味。


 飯田蛇笏、という著名な俳人の、蛇蝎は”弟子”を自称していたが、書簡のやりとりを少ししたことあるだけだった。

 

 「穭田かあ…和風のお題やなあ。普段田んぼなんか目にする機会がない人のほうが多いやろうに。おれも追憶の中にしかないよ。でも、面白い言葉ではあるな?だいたい、この字の意味も全然知らんよ、不勉強極まりない。おれとしたことが」


 ぶつぶつ言いながら、歳時記をめくると、「稲刈りあとの稲穂に、青々とした若いひこばえが生えたもの」で、「穭」は、それ自体の正式な名称と、字らしい。


 「ほほお、鰥夫、という字も魚ヘンやから別にそんな名前の魚がいるんかと思って調べたりしたけど、同じやな。のぎヘンに、魯鈍の魯か。「やぐら」と、間違えそうになるなあ」


 俳人だけあって、飯田蛇蝎というパロディみたいな号だが、漢字には精しいのだった。


 「秋らしいし、故事由来も面白いから名句もありそうで?うーん、確かに多い。

曰く、

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蛇蝎 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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