最終話 sideシーラ
午後3時、王都のど真ん中に設置されているガラスで出来た処刑台。
私はこんなにも美しい首切り台を見たことがない。
きっとこれは魔法で作られたものだ。
その美しい処刑台に上がるのは、つい昨日まで全てを手にしていた人だった。
白い質素な服を着せられ、アクセサリーも全て取った彼女はその辺にいるただの人間に見えた。
彼女が処刑台に立つと、罪状を読み上げるルーク様と死刑執行人のナイトが元皇女の後ろにつく。
その瞬間、かつてないほどの歓声がこの場を包んだ。
英雄王万歳!英雄王万歳!
しきりにそう聞こえる。
ナイトは元々、平民たちの間では人気があった。
14歳でドラゴンを倒し、魔物との死線も幾度となく切り抜け国民を救ってきた。
まさにナイトは英雄そのもの。
その英雄が王家の陰謀を暴き悪女を処刑台へ送る、まるで何かの物語だ。
私は処刑台の一番前に立ちその瞬間を呆然と立っている。
死んだ魚のような目をした彼女は私と目が合った途端に憎悪を滲ませ叫んだ。
「愚かな愚民ども!よく聞きなさい!
私に刃を振るうこの男は人魚に操られている!
魔物に溺れた男が統治する国などすぐに破滅するわ!!私は地獄でお前たちの無様な姿を嘲り笑ってやる!!!
お前は…お前だけは許さない!
海の悪魔め!!!!」
最後の憎悪の籠ったヒステリックな言動は私に向けて言ったもの。
あまりの剣幕に周りは静まり返った。
前の私なら泣いていたかもしれない。
でも今は違う。
ここまでして私を欲したナイトに着いていくと決めたなら泣いてなんかいられない。
「言いたい事はそれだけ?
私はあなたの言葉には振り回されない。
地獄でちゃんと見ていてね。
ナイトはこの国を破滅させたりしないし私はナイトと幸せに生きていくから。」
私の言葉に拍手が起こる。
処刑台の上にいるナイトは満足そうに笑うと…
「さすがは俺の妻だ。」
そんな嬉しい言葉を言ってくれる。
そして…
ザシュッ!!!
「ひぎっ!!」
この国で一番高貴な女の首が、ナイトの振るった剣により刎ねられた。
湧き上がる歓声、止まらない赤黒い血。
これから先、私がナイトと生きるにあたって避けられない色だ。
だからこそ、私は死ぬまでナイトの側にいよう。
英雄王が暴君にならないように。
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