sideルーク

一度解散して各々準備を整えて合流したのは昼過ぎのこと。

僕がルーンを屋敷に連れて帰り世話をして戻った頃には王都の城はまるで別物になっていた。

そもそも血みどろの城じゃないし装飾が全て変わっている。


ナイトがかなり無理をして魔法を使ったんだろう。


丸一日寝てなくて、化け物の相手をしてさらにこんな大掛かりな魔法を一人でやってのけるなんて。

正直、真似できることじゃない。


ナイトはどこまでも規格外だ。


ナイトはやると言えばやる男だと知っていたけど、まさか本当にこの国をひっくり返すなんて思わなかった。

あの後、シーラからいろいろな話を聞いて大体のことが読めてきた。


元皇女が元国王を暗殺した、そんな話はもちろんナイトの作り話。

実際に国王を殺したのはナイトだろう。

ナイトには本当に感服するよ。


厳重に隠していたであろう怪物を見つけ出し、完璧なタイミングで殺戮を繰り広げ、全ての辻褄が合うように根回しもあらかじめしてあった。

今回の死者のほとんどは前国王の手のものばかり。


ナイトは自分が王座を取るに当たって邪魔になる人物が死ぬのを見てから英雄のふりをしたんだ。


ナイトは一体いつからこのことを計画していたんだろう。

そもそもあの怪物の出所をどうやって知った?


僕もシーラも、ナイトの城に怪物を放ったのは元皇女だと言う事がバレないように気を遣っていた。


でも、ナイトはわざわざ僕とシーラを巻いて怪物を探しに行き見事に見つけることができた。

これが偶然なわけがない。


「あ!ルーク様!ルーン!」


広間に響いた綺麗な声。

僕とルーンを見つけたシーラが嬉しそうにこっちへ走ってきた。


ルーンはすぐにシーラに駆け寄ると互いに手を握り額をくっつけた。

この挨拶はいつ見ても驚く。


人間にはない挨拶だからね。


「人間の服もよく似合うね!」

「うん、ルークが貸してくれたんだ。」


背格好が僕と似てたからね。

ほぼピッタリなのは正直驚いたけど。


「そうだったんだ。

ルーク様、ありがとうございます。」


ニコニコとまるで天使のような笑みを浮かべるシーラ。

その後ろには…


「その再会の仕方は本当にどうにかならないのか?」


悪魔のような笑みを浮かべたナイトがいた。


ナイトは人相が悪い事にも加えて顔色も悪い。

寝不足、魔力不足、疲労、いろいろ原因がありそうだね。


「ナイト、少し仮眠を取ったら?」


ナイトがいろいろ強いことは知ってるけどやっぱり人間だからね。無理はよくない。


「是非そうしたいがまだやる事の半分も終わってねぇんだよ。ちなみにメインイベントは午後3時からだ。」


午後3時ね。

今日、ここにくる途中街中が大騒ぎだった。


元皇女の起こした暴動と殺戮、王暗殺事件、さらには新しい王の話題で持ちきりだ。

新聞が飛ぶように売れていたと聞いたよ。


そしてその新聞に書いてあった、王都の一番広い広場で行われるメインイベント。


それは、元皇女の処刑だ。


「あの皇女が処刑される日が来るなんてね。

正直この状況が今だに信じられないよ。

ナイトが王様って恐怖政治しか想像できないし。」


僕がそう言うとナイトは鼻で笑った。


「俺は優秀な奴と強い奴とシーラには優しい男だ。国くらい簡単にまとめてやるよ。」


うん、軍事国家決定かな。

この先、本当にどうなることやら。


「あ、そうそう。

お前今日からここで働け、政治関連はお前に頼りっぱなしになると思うからよろしくな。」


まぁ、いずれはそう言われるとは思っていたけどまさか今日からなんて。


「分かったよ、英雄王。」


ナイトと二人で国を動かすのか。

成功するか失敗するか、そんな事はもちろん分からない。


ただ僕はワクワクしていた。

きっとこの国は誰もが羨む素晴らしい国になる。


その確信があったからだ。

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