sideナイト

これで嘘つきが誰か分かった。

とりあえず、これに関わった人間は皆殺しにする。

もちろん…


「案内しろ、シーラをどこへ捨てた?」


「かしこまりました!

すぐに馬の用意を…」


この男も殺してやる。


「そんな時間はない。

魔法で移動するから場所だけ言え。」


「は、はい!えっと…北へ何時間も行けば海があります…。」


正確な場所すら言えない馬鹿なのか、本当に使えない。


まぁいい、北に海は一つしかない。


「それだけわかれば十分だ。

エド、ミザリー、今回のことに関わった者を地下牢へぶち込んどけ。逃したら代わりにお前達の首を刎ねる。」


俺の言葉に馬鹿どもが騒ぎ始めた。


「公爵様!お許しください!

全て公爵様のためを思いやった事なんです!!

それにあの人魚は身の程も弁えず」

「ふざけるな!!俺は騙されたんです!!

俺は関係ありません!!!公爵様!!!」

「こら!暴れるんじゃありませんよ!!大人しくなさい!!!」

「暴れるな!!!この!!」


あぁ…うるさい……

今すぐここで黙らせてやりたいがそれは後だ。

今は何よりもシーラが優先、それ以上にやる事なんて何もない。


ギリギリ魔法で飛べる距離だった。

一瞬で北の海の浜辺に着いた。

潮風が冷たく頬を撫で、潮の香りが辺りを漂っている。


「シーラ!!!」


俺の呼び声は波の音に簡単にかき消された。

こんなのは現実じゃない、悪い夢だ。

シーラが俺の元からいなくなるなんて。


「シーラ………。」


少し先に視線をやると白い布が風で揺れている。

よく見るとそれはシーラが着ていたネグリジェだ。

近くに行って確認すれば間違いない事がわかる。

ここだ、ここに確かにいた。

浜辺には何かを引きずったような跡もあった。


歩けないからあの男がシーラを引きずったんだろう。


そしてその後は簡単だ。

シーラは海へ逃げた。


海は嫌いだ。

俺がどんなに魔法を重ねてもシーラを囲えないし探せない。


何度シーラの足を奪おうが、尾鰭に戻ってしまえば簡単に遠くへ行く。


「シーラ……。」


ほらな、これが現実だ。

もうどこにいるか見当が付かない。


くそ…アイツら…あの馬鹿どものせいで…!!!


「あ゛ぁ!!!!!」


苛立ちは何度吐き出しても変わらなかった。


もういい…こうなったら手段は選ばない。

必ず見つけ出してやる。

シーラがいたから生きて来られた。

シーラだけが唯一生きる意味だった。

それをこんな形で失うなんてありえない。


こんな現実、受け入れてたまるか。

必ず探し出してやる。


例え世界中の海を干上がらせる事になったとしても俺は諦めない。

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