sideメイド
嘘でしょ?どうしてバレたの?
そもそもどうして公爵様はこんなにも早くお戻りになったの?
オークの大群が出たから討伐に向かったはずなのに……。
「さっさと答えろ、シーラに何をした?」
公爵様が私の目の前に歩いて来られた。
その気迫と殺気に私は言葉を失ってしまう。
すぐに分かった、目の前の恐ろしい男が本気で怒っていると。
「あ…あの…わ…私は……」
嘘をつくのよ。
正直に全て話したら確実に殺される!
「お嬢様の…お手伝いを、したんです…!」
そうよ、我ながら嘘がうまい。
あの生意気な女が勝手に出て行った事にすればいい。
「お嬢様が…お出かけをしたいと言ったので…でも、御者がいなかったので、その男を雇いお嬢様を街へ連れていったんです…!その後は知りません!!きっとあの男がお嬢様をどこかへ攫ったんですよ!!」
どうせ地位も金もないしょうもない男よ、アイツに全てなすりつければ問題ない。
「嘘です!公爵様!!
あの女は嘘をついています!!!
確かに女、お嬢様を遠くの海へ捨てて来いと言いました!!それにこの女だけではありません!!後2人いました!!」
卑しい貧乏人のくせにベラベラと!!!
「公爵様!その男こそ嘘をついています!!
私はお嬢様の願いを叶えただけです!!
お嬢様は公爵様がいらっしゃらない間、街で買い物をしたいと仰っていました!!」
「嘘をつくな!!!
気を失ったお嬢様をお前たちが引きずって来たんだろうが!!!」
真夜中の城に私と男の必死な怒鳴り声が響き渡った。
ここでバレるわけにはいかない。
そもそもどうして私が責められなければいけないのよ。
あの女、少し見た目がいいからって公爵様に拾われてムカつくのよ。
たかが魚の分際で…!
歩けもしない愚図のくせに…あれ?
そうだ…あの女、私が階段から突き落とした時は全く歩けていなかった。
公爵様の魔力があの女の足から消えていたからてっきり見捨てられたのかと思ったのに。
私はここで自分の言い訳の矛盾点を見つけた。
歩けない女が自ら街へ行きたいと言い出すだろうか。
いや…、でも大丈夫よ。
午前中に歩けるようになっていたと説明すればいい。
どうせもう海に入っているはずよ、戻ってくるはずがないわ。
あの役に立たない汚い男にちゃんと命令したんだから。
公爵様の直々の命令と伝えるように、って。
「一つ教えてくれるか、シーラは街に行きたいと言ったんだよな?
シーラは自分の足で歩けるようになったのか?」
やっぱり、聞かれると思った。
「はい!歩いておりました!
この男の馬車にもご自分の足で乗られたんですよ!お嬢様はこのお城を出るまでは元気でした!」
「ハハ…それはそれは、シーラは物凄い魔法使いだなぁ?」
公爵様はさらに怒ったらしく私の方へ手を伸ばし髪を掴み上げた。
「きゃあっ!!!!」
私は恐怖と頭で腰が抜けてしまった。
それでも公爵様は私の髪を離しはしない。
それどころかグッと私の体を持ち上げるように髪をさらに引っ張り上げた。
「ゔっ…!」
「「公爵様!!!」」
公爵様が私にグッと顔を近づけた。
瞳孔は開かれ、その怒れる姿はまるで獣のようだ。
「なぁ、教えてくれよクソ女。
シーラに歩けない魔法をかけたのにどうやって馬車に乗り込むんだ?」
「………え?」
嘘よ、そんなの。
「で…でも……、お嬢様から公爵様の魔力は感じられませんでした!!」
「あぁ、感じるはずないだろ。
魔法の痕跡は完全に消す事はできないが隠す事はできる。
お前ら使用人に余計なものを察知されてシーラに伝わったら面倒だから隠していた。」
公爵様は狂っている。
歩けるようにした魔法を取り上げるフリをして、歩けない魔法をあの人魚にかけた?
どうして?
そんなことしたら一生歩けないじゃない。
あの人魚が歩けるようになったらこの城を追い出すって噂よ?
公爵様はあの人魚に迷惑しているんじゃないの?
一体どう言うこと?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます