エイプリルフールを斬る!

沼津平成

第1話

 エイプリルフールブッチギリ部隊、略してエイブッチ——最初から略さないといけない名前だ——のミーティングがあるの、といって早瀬は家を出た。

 図書館の2階の円卓のKEEP OUTの文字をくぐり、早瀬は席についた。この席は館長が特別にあけてくれたものだ。もっともくぐる度に誰かは早瀬達に白い目を向けるが。

 しかし2・5階の静寂を守るためなら仕方がない。早瀬は円卓を左にずらせた。

 階段で息を潜ませていると、佐藤君(仮)が肩に妖精セナ氏をつれてやってきた。毎年3月31日はミーティングの日だ。語呂合わせでもなんでもなく、これはエイブッチのお約束だ。

 4月1日——英仏智エイブッチが一番働かないといけない日は、絶対この日だ。


 そもそもエイブッチってどんな舞台なの?

 そう聞かれても早瀬はざっとしか説明できない。嘘をついた人・つかれた人の時間をその日の朝に巻き戻すので、佐藤君に説明してもらうことにしよう。

「早瀬、何考えてるの?」

「いや、改めてエイブッチってなんだっけ——って」

「簡単じゃない。嘘つきを朝に閉じ込める部隊だ」

 佐藤君の方が短かった。セナに至っては「嘘をみつける部隊」としか思っていないらしい。セナはそれ担当だし仕方ないのだが。


                  *


「早瀬は、10時〜13時でA公園をよろ!」

「OK、佐藤氏は11時〜C学ね!」

「なるほど部活のある学校か」

「うん、家と学校って一番嘘が多いじゃない」

「まあ確かにね」

 早瀬たちの活動は、早瀬を除くと、早瀬の母にしかバレていない。佐藤君は兄としか暮らしていないが早瀬はちゃんと家族を持っているのだ。

 よし! 4月1日まで待とう!

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