第13話 ケロッとしている心

 男の汚い裸を見たにもかかわらず、心は不機嫌というわけではなかった。


「心さん、あの、その・・・・・・」


「私は気にしていないから、引きずるのはやめてね」


 心は頭を下げたあと、右手を差し出してきた。


「さっきの話の続きですけど、パンツを貸してください」


 パンツのことで、さっきのことを忘れてくれれば。淡い期待を抱いた男は、簡単に交渉に応じた。


「わかった。パンツを貸してやるよ」


「ありがとうございます。これを借ります・・・・・・」


 心が選んだのは、一番汚くなっているパンツ。タンスの中に入ってはいるものの、一カ月以上放置されている。


「心さん、もっときれいなものを・・・・・・」


「他人の物を借りるのだから、いちばん汚いのを履くのは当然のことです。洗濯をしていないのか、キノコが生えそうなくらいの汚さですけど・・・・・・」


 黄ばんだパンツは、一カ月以上は放置されている。それゆえ、色は明らかに悪化していた。


 それにもかかわらず、捨てるという選択肢はなかった。今は履かないけど、いつかは身に着けるかもしれない、その思いが捨てることを躊躇させている。


「着替えるために、トイレを借りるね」


 心の着替えを想像したからか、顔がにやついてしまった。


「私の裸を想像しているのかな。そんなに見たいなら、ここで下着を脱いでもいいけど・・・・・・」


 心の下半身を思い浮かべると、顔は真っ赤になった。


「トイレ、お風呂で着替えてください・・・・・・」


「わかったよ。お風呂で着替えるね・・・・・・」


 いろいろな刺激のせいで、メンタルはおおいに疲れている。


「洗濯機も使っていいかな。下着をきれいにしておきたいの・・・・・・」


「ああ。いいぜ」


「ありがとう。洗濯機を借りるね」 

  

 着替え、ブラなどは持っているのに、下着だけを忘れてくる。心はしっかりしているようで、抜けている部分のある女の子なのかなと思った。

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