第3話 未練を断ち切れない
心に好きという気持ちを伝えてから、早くも一週間が経過しようとしていた。
フラれたことへのショックはあるものの、前を向くようにしていた。一人の女に告白を断られたからといって、交際できないわけでもないし、結婚できないわけでもない。心を切り替えていけば、いい相手を見つけられるはず。
背伸びをした直後、告白した女性が目に入った。視線をそらしたいと思いつつも、彼女を見つめてしまっている。初回の告白で完全玉砕した男は、いまだに未練を断ち切れていなかった。
心の視線がこちらに向けられた直後、ちょっとばかりの罪悪感をおぼえる。彼女をロックオンしていた黒目は、無意識のうちに別の角度に向けられていた。
こちらの心境を察したのか、田村川夢彦が優しい声をかけてくれた。
「彩羽、いろいろと大変そうだな」
顔を手で覆った状態で、小さく頷いた。
「ああ。いろいろとな・・・・・・」
「新しい恋を見つけたら、心はちょっとは軽くなるかもな」
「そ、そんなものかな・・・・・・」
「ああ、きっとそうなる」
夢彦は彼女にフラれるも、元気な姿を見せている。落ち込まないところは、参考にしていけるといいな。
「彩羽、ゲーセンに行こうぜ。クレーンゲームに、新しい人形が入ったんだ」
「そうなんだ。それならいこうかな・・・・・・」
10回連続で商品をゲットできるほど、クレーンゲームを得意としている。これといった取り柄のない男にとって、数少ない長所であるといえる。
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