第2話 告白を振った女(心編)

 一度失敗したくらいで、あんなにくよくよしなくてもいいのに。最初はうまくいかなくても、二度目、三度目の告白でうまくいくことはありえる。運命を切り開くためには、地道に告白を続けていけばいい。


 どんなに好きな人であっても、一度目の告白はNGを出すようにしている。たった一回の失敗でくじけるような男は、運気を手繰り寄せられないような気がするから。最後まであきらめない心が、恋愛には必須条件である。


 告白を振ったばかりの女のところに、六道葵がやってきた。


「心、告白はどうしたの?」


「今回も断ったよ。もう一度やってきたら、おつきあいするかもしれないね」


 六道葵は空に届きそうなほどの、大きなため息をついた。


「そんなことばかりしていると、誰とも交際できないまま人生を終えることになるよ。それでいいの?」


 顎に手を当てながら、心の中にある回答を探していく。


「ちょっとだけ、嫌かな・・・・・・」


「そう思っているなら、一度目の告白でOKしたほうがいいよ。フラれた異性に、二度目の告白をする男は少数派だよ」


 一度目の告白を断ったのは三回目。過去の二回については、二度目の告白はなかった。勇気を振り絞れなかったのか、一区切りをつけたのか、それとも・・・・・・。


 葵は小さく瞬きをする。


「告白を待つばかりではなく、積極的に動いていかないとだめだよ。じっとしていても、ものごとはいい方向に変わることはないよ」


「自分から告白する・・・・・・」


 葵は鼻で息を吸った。


「そうだよ。うまくいかないことも多いけど、いつかは報われるときがくるはずだよ」


 告白=相手からするもの、という認識を持っていた。自分から相手に想いを伝える発想は、完全に欠如していた。


「心には好きな人はいないの?」


「うーん、どうだろう」


 一番目、二番目、三番目に告白してきた男、その他のクラスメイトを比較してみると、一人の男が頭に浮かんできた。


「彩羽君ならつきあってもいいかな・・・・・」


 彩羽は三番目に告白してきた男で、数分前にノーを突き付けた。


「それなら、OKを出しておけばよかったのに。放っておいたら、誰かに取られちゃうからね」

 

「そうなのかな・・・・・・」


 彩羽は地味なタイプで、女性からの人気は皆無。すぐに交際をスタートさせるとは思えない。


「高校にはたくさんのライバルがいるんだもん。放置するのは、リスキーだと思うよ」


「葵がそういうなら、アクションを起こしてみようかな・・・・・・」


「あんたは行動力がすごすぎるから、セーブするのを忘れないでね」


「わかったよ。買い物をしなくちゃいけないから、今日のところはおいとまするね」


 手を振ったあと、全力ダッシュする。運動不足ゆえに、30メートルも続かなかった。 

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