告白を笑顔で振った女が、母から渡された合鍵を使い、無断で家に入ってきます
のんびり
第1話 告白撃沈
目の前には好きな人が立っており、これから告白をする。心拍数を上げるには、十分すぎる状況が整っている。
鼻で三度ほど息を吸ってから、胸に秘めていた思いを伝える。
「心さんのことが好きです。交際していただけないでしょうか?」
三カ月前から言葉にしたかったことを、本人にようやく伝えることができた。勇気をなかなか振り絞れない男は、大きな一歩を踏み出したといえる。
満心(みたすこころ)を好きになったのは、笑顔がとっても素敵だから。心をやらわげる笑みを見られたら、一日の疲れを完全に吹っ飛ばすことができそうだ。
心はにっこりと笑ったあと、告白に対しての返事をする。
「ごめん。キミを恋愛対象としては見れないんだ」
失敗することを予測していても、ダメージは小さくなかった。告白を断られる=自分の人間性を否定されている。
心は告白を断っているのに、満面の笑みを見せている。恋愛経験値皆無の男には、何を意味しているのかわからなかった。
「彩羽君なら、いい女性を見つけられるはずだよ。今は苦しいかもしれないけど、前を向いていけるといいね」
心の沈んでいる男に、満面の笑みを見せ続ける女。思いやりのつもりなのだとすれば、ちょっとだけずれているような気がした。
「家の用事を済ませなくちゃいけないから、私はすぐに帰るね・・・・・・」
人生初の告白は、苦みたっぷりの結果に終わった。三カ月も告白するのに要した男は、次の恋愛に前向きになれるのだろうか。
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