第7話 女が部屋にあがっている

 異性を部屋に招くのは初めての経験で、恋心まで抱いている。心の落ち着きは、一秒ごとに奪われていく。


 心に視線を送る。こちらの動揺など知る由もない女は、ピンピンとしていた。


「男の一人暮らしにしては、部屋をきれいに掃除しているんだね」


「そうかもしれないな・・・・・・」


 部屋を掃除しなくてもいいよう、ものを最小限にとどめている。労力を極力減らすためには、最善の選択肢といえる。


「男の人の部屋って、もっと散らかっているイメージがあったよ」


 普段から親しくしている、要人優斗は部屋が散らかっている。完満天(かんまんてん=完璧で満点)は埃一つないくらいに、きれいな部屋である。男だから、きれい、汚いというのはあてはまらないかなと思える。  


「ゲームがたくさんだね。男の人はどんなゲームをするの?」


「カ〇○○のく〇○○○や、○○○ん○○○などをやっている。最新のゲームが好きで、常に新しいものをプレイしている」


「そうなんだ」


 自分から話をふってきたにしては、冷たい反応をしている。プレイしているゲームは、お気に召さなかったのかな。


「満さんはゲームはやらないの?」


「あんまりかな。友達と遊んでいるほうが、家の中でゲームをしているよりも遥かに楽しいよ」


 心は明るく、笑顔の時間が長い。友達を作るには、ぴったりの条件を兼ね備えている。


「彩羽君の顔色からして、栄養バランスはとてつもなく悪そうだね。私でよければ、栄養たっぷりの料理を作ってあげるよ」


 一人暮らしを始めてから、カップラーメン、購買部のパンなどを中心に食べている。野菜、果物を食べるのは、気が向いたときだけとなっている。


 心はカバンの中から、〇○○○○のカレー粉、鶏肉、ジャガイモ、玉ねぎ、にんじんを取り出す。


「食材をスーパーで購入しておいたんだ。これを使って、カレーを作ってあげるね」


 カレーを作れるのか。料理スキルは予想していたよりも高いレベルにある。


 心は炊飯器の中をチェックする。


「ご飯もないみたいだね」


 母より炊飯器をプレゼントされるも、炊飯はこれまでに三回のみ。ご飯を炊くための道具は、置物同然の扱いを受けている。


「ご飯がないなら、うどんにすればいいよね」


 心はカバンの中から、うどんを追加で取り出す。もしかしたらだけど、こちらの食生活をリサーチしていたのかな。

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