第5話 昼食のひと時
廊下を歩いているとき、マコはふとシュウトに話しかけた。
「そういえばなんでクロウはアラヤを残したの?」
「おそらく僕を助けてくれたときに、クロウさんのことをクソ生真面目野郎って言ってたからだと思います。帰るときにそのことを言ったら、後でシバくって言ってましたし」
「何それ!超ウケる!。実際、あいつクソ生真面だから事実ではあるけど!」
マコは腹を抱えて笑っていた。それをシュウトは苦笑いで見ていたのだった。
しばらく歩いていると広い部屋に着いた。中は沢山の隊員達が食事をとっている。
「はー面白かった!。さて、ここが食堂よ。ここのことは聞いた?」
「はい。クロウさんから色々と聞きました。夜中でも使えるし、出前もできるって」
「なら、説明はいらないわね。注文はそこのカウンターでさっき貰った食券を渡して食べたいメニューを言えばいいの、受け取り口はその先よ。メニューはその上か横を見ればいいわ。それじゃ、私はお先にね。席は取っておくから安心してねー!」
マコは行ってしまった。残ったシュウトはカウンターの方へ行き、何を食べるか考えていた。色々悩んだ結果、ざるうどんを注文することにした。
シュウトは券売機に行き、先程渡された食券でざるうどんを購入した。
「いらっしゃいませ!食券を出してください!」
「冷たいざるうどんを1つ」
「ざるうどんですね!トレーを持って隣に進んで下さい!。途中に天ぷらがあるのでこのお皿に3つまでとれるのでお好きにどうぞ!」
彼はトレーと皿を受け取り、天ぷらが置かれている所まで行った。天ぷらコーナーは舞茸、竹輪、蓮根など、様々な天ぷらが置かれており、彼は舞茸と竹輪と鶏肉を皿に載せ進んだ。
受け取り口ではもううどんができていたようで到着するとすぐにうどんが渡された。
「お待たせしました!ざるうどんです!。お箸と薬味等はその先でどうぞ!。飲み物はウォーターサーバーからセルフでお願いします!」
受け取り口のスタッフから、打ち立ての白くツヤツヤのうどんと黒いつゆが注がれた容器をトレーに置いた。シュウトはその先にある刻みネギとすりおろした生姜を容器に少しのせて、マコの座っている席を探し始めた。
なかなか見つからないのか周りを見渡していると、後ろから声をかけられた。
「どないした?なんか困り事か?」
シュウトが振り向くと黒髪の短髪でギザ歯の男性がいた。
「その服装やと訓練生やろか。他とはぐれたんか?」
「えっと…一緒に来てくれた人が席をとってくれているのですが、場所が分からなくて……」
「おーそっかそっか。誰がまってるのかいな?」
「マコさんって人です」
「おーマコか!。あいつやったら向こうの席にいたで!。ついてきいや」
男性はニコりと笑い歩いていく。シュウトはそれについて行った。
少し歩くと席に座っているマコの姿が見えた。マコもシュウトが見えたのか手を振っている。
「こっちこっちー!いやーごめんね?。シュウト君に場所を言い忘れてた。あれ?カズキじゃん!。シュウト君を送ってくれたの?ありがとう!」
「かまへんかまへん!困ったときはお互いさまやで!」
「ありがとうございます。助かりました。えっと……カズキ……さん?」
「お、そうかまだ自己紹介してないんやったな!。俺はカズキや!よろしゅうな!」
「シュウトです。よろしくお願いします」
「うん、よろしゅうなシュウト君!。……おっと、俺もメシ貰いに行かんとな。ほなさいなら!」
「ありがとうございました!」
カズキは手を振って注文口へと向かって行った。
「カズキと仲良くなったの?凄いわねー」
「仲良くなったと言うよりも向こうから声をかけてくれたんですよ」
「ふーん、珍しいわね。あいつから声をかけてくるなんて」
「それってどういう……」
「すまない、遅くなった」
シュウトの声と被せてクロウと少し顔がボコボコになったアラヤが席に着た。2人はもう注文も済ませたようでクロウはカツ丼、アラヤはラーメンがトレーに乗っている。
「あ、お疲れ様〜。報告書は書き終わった?」
「ああ。昼休みが終わったらでいいから確認と提出を頼む」
「了解〜。ささ!食べましょ!」
4人は昼食を食べ始めた。
シュウトはうどんをつゆにつけて、啜る。コシのある麺と、つゆの香ばしい出汁の香りが鼻を抜けていく。薬味を入れると、ネギとすりおろした生姜の香りが鼻を抜けていき、食欲を更に増していく。
「凄く美味しそうに食べてるねぇ」
「あ!すいません……」
「いや、問題ないさ。食事は美味しく、楽しく食べるのが1番いいんだ。君のような反応を見せてくれれば、作ってくれた人もさぞかし嬉しいだろう」
マコは美味しそうにうどんを食べているシュウトの姿を嬉しそうに見ていた。クロウは誤っているシュウトに微笑みながら語りかけた。
4人は最近起こったことを話しながら食べ進んでいく。
「だからさぁ、愚痴ってのはその人に聞かれなきゃいいと思うんだよね。絶対にばらさないって確信した人に言うべきだよ」
「その顔で言われると説得感あるよね〜」
「すいません…。僕が口を滑らせたがために……」
「気にしなくていい。責めるなら俺を責めるんだ。俺が言ってくれっていったから言ったまでだ」
「いや、別に怒る気も責める気もないけど……」
「そういえばなんでアラヤさんはこんなにボコボコに?」
「報告書を書き終わった後、少し組手をしていた。組手というより八つ当たりに近いけどな」
「あはは……」
シュウトは苦笑いをするしかなかった。
昼食をとった後、ルームに戻ると行く前にはなかった4つ目の机とキャスター付きの椅子が置かれていた。
「これは?」
「君のデスクだ。待機命令が出た場合、ここが君の定位置になる。端末等はこれから配備の予定だ」
どうやら昼休み中にクロウがシュウトのデスクを置くように手配してくれたようだ。シュウトは少し目を輝かせている。
「これが…僕の……」
「気に入ったか?」
「はい!。ありがとうございます!」
「それなら良かった。ずっと丸椅子だと疲れてしまうだろう。座って椅子の高さなり、引き出しの確認でもするといい。飲み物のカップ等は後で買ってきてくれ。領収書を持ってくれば経費として落としてくれるはずだ」
シュウトは椅子に座り、デスクの引き出しの中を開けて見ている。
「引き出しは書類等が混ざらなければ自由に使っていい。菓子や軽食を入れてくれて構わない。ただ、爆発物は持ち込まないようにしてくれ。掃除も怠るなよ」
「はい!」
「さて、今は昼休憩だ。自由に過ごして構わない。俺は午後の準備に取り掛かるから失礼する」
そう言ってクロウはルームから出て行った。
「さてと!、なんかお茶でも飲むか?コーヒーでもいいぞ?」
「とりあえず、トイレ行ってきます」
「おう、案内するぜ」
そうしてシュウトは昼休憩を過ごした。
昼休憩が終わり、クロウを除いた3人が自身のデスクに座っているとドアが開き、プロジェクターとスクリーンと資料らしき紙の束を持ってきた。
「よし、それじゃあ午後は基礎知識を学び直してもらう。2人も復習と思って聞いてくれ」
クロウはプロジェクターを端末に繋ぎ、スクリーンを開き、資料を3人に配った。
「よく短時間でここまでの機材を集めたな」
「ケント司令官がシュウトの教育の為に、それに必要な機材を最優先で回してくれるように手配してくれた」
「すげぇな。あの人、シュウトのことが気に入ったんかな?」
「まぁ、昨日まで学生だった人が突然最前戦に立ってしまったものだ。せめて生き残る術を与えなければならないだろう」
「結構稀なんですか?。僕のパターンって」
「稀でしょうね。そもそも能力に目覚めること自体が少数だから、相対的にレアケースになるのよ」
「そうなんですか。なんか一気に心配になってきた……」
「ほら、3人とも!。話が進まないから始めるぞ」
準備を終えたクロウが手を叩き、話し合いを中断させる。3人がスクリーンに向いたのを確認すると、クロウは部屋の電気を消し、端末を操作する。スクリーンには「ワールドポータルの歴史」と書かれたスライドが写っていた。
「まずはワールドポータルとガーディアンズの歴史について説明する。基礎中の基礎だ。しっかり聞けよ?」
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