第1話 眠れぬ冬

 もしこれが月曜日の、十分間の昼休みだとしたら近くの席にさぞかし揶揄われることだろう。なぜか私の周りには女子しかいないのだ。嬉しいんだか悲しいんだか……。

 泉君は高校を1年間で中退し起業・独立した。「ASOBI文庫」は今年の夏株式上場を果たした。この辺りで泉君は有名人になっていた。

 対照的に私は、いつまで立っても、無名人だ。

 スマホを手に取って、YOUTUBEを見始める。ショートで、「小学校時代・大人時代の〇〇の違い」みたいなものが最近いっぱいあることを思い出し、私は頭の中でそれを制作してみる。

「夢はなあに?」

 と聞かれたら、幼稚園の私はどう答えるだろうか。

「パティシエさん!」

 とでも答えただろうか。

 では小学校の私はどうだろうか。やっぱりパティシエさんなのだろう。

 中学校あたりから夢は変わり始めて、パティシエさんはピアニストに転身した。


「冴、ご飯だよ〜」

 一回からお母さんの声が追いかけてくる。ふん、私の苦労なんかこれっぽちもわかってないくせに。

「は〜い」と言いながら、私はあと1分くらいはベッドの上で動かない。

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手紙が、二通。 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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