第3話 荒野の試練
見渡す限りの荒野。乾いた風が吹き荒れ、砂塵が舞い上がる。容赦なく照りつける太陽が、二人の体力を奪っていく。
「水…」
咲子は喉をカラカラに乾かし、呟いた。
「もう、限界…」
誠司もまた、酷い渇きに襲われていた。唇はひび割れ、意識が朦朧としてくる。
「もう少し…頑張ろう…」
誠司は咲子の肩を抱き、励ました。
二人はよろめきながら、荒野を歩き続けた。
どれくらい歩いただろうか。二人の目の前に、ぼんやりと何かが見えてきた。
「あれは…」
咲子は目を凝らした。
それは、小さな集落だった。粗末な小屋がいくつか建ち並び、人影が見える。
「助かった…」
誠司は安堵のため息をついた。
二人はよろめきながら、集落へと向かった。
集落の人々は、よそ者である二人を警戒しながらも、水と食料を与えてくれた。言葉は通じないが、彼らの親切に二人は心から感謝した。
「ありがとう…」
咲子は片言の言葉で礼を言った。
集落の長老らしき老人が、二人に近づいてきた。老人は身振り手振りで、何かを伝えようとしている。
「え…?私たちに、ここにいろと…?」
咲子は老人の言葉を理解したようだった。
老人は頷いた。
誠司は戸惑った。
「でも…私たちは、ここにいてはいけないんだ。秘密警察に追われている…」
老人は首を振った。そして、地面に何かを書き始めた。
それは、地図だった。地図には、この集落から続く道が描かれている。
「この道を…行けと…?」
誠司は尋ねた。
老人は頷いた。そして、地図の終点に印をつけた。
「そこは…?」
咲子は尋ねた。
老人は、何かを言おうとした。しかし、その瞬間、老人の表情が変わった。
「!」
老人は驚愕の表情で、二人の背後を指さした。
二人が振り返ると、そこには…
「秘密警察…!」
誠司は叫んだ。
武装した秘密警察の部隊が、集落を取り囲んでいた。
「しまった…!」
誠司は歯ぎしりした。
「どうして…?」
咲子は理解できなかった。
「なぜ、ここに…?」
その時、秘密警察の部隊の中から、一人の男が出てきた。
それは…
「ヴィクトル…!」
誠司は驚愕した。
ヴィクトルは冷酷な笑みを浮かべながら、二人に近づいてきた。
「やっと…見つけたぞ…」
ヴィクトルは言った。
「逃がすものか…」
(第三話・終)
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