第14話

 それら二種の刃物は対の武装となっている。

 貴方は普段その二本を分解して組み上げ、両武器の長所を兼ね備えた一本の武器として常用している。

 鋸鉈と称されるそれは、対怪物を意図とした武器として汎用性に優れており、昔話や童話、英雄の伝記にも登場する由緒正しき狩り道具の一つである。


 唯一の欠点としては、重量があるという一点に尽きる。

 それゆえに、一定以上の筋力を必要とする武装であるが、黒曜の神の加護を受けた断罪者にとって鋸鉈の重量は労苦に値せず、むしろ軽いと評して使わぬ者が多い。


 この鋸鉈を使いやすいと言って使う断罪者は貴方くらいのものであり、他の者はもっと別の、重量の大きな特別製の大型武器を使用するのが常であった。


 そんな力自慢の断罪者たちを、村長も近くで見てきたのだろう。貴方の手入れしている小型の武装を見て、頼りないと言いたげな表情をしている。


 だが、貴方は村長の心配など気にも留めない。

 なぜなら貴方はこの鋸鉈によって多くの怪物の罪業と命脈を断ち切ってきたからだ。日々、訓練にて弛まずに鍛え上げてきた技術があり、討伐によって獲得してきた戦闘経験があるからだ。


 狩れる自信を持ってはいるが、しかし決して慢心するつもりはない。


 村長の話を聞く限りでは、それほど苦も無く倒せるだろう。

 これまでの経験則から貴方はそのように判断してはいるが、油断をすれば殺されるのは自分であることも十分に承知している。


 ゆえに今宵も、貴方は鉈の刃をもって怪物の強靭な毛皮を断ち切り、血肉を裂き、命脈を絶ち、その先にある罪業をも断って、怪物と化した者の纏う罪業を、その積み重ねを阻止することを自身に誓った。

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